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三鷹歌農書 2941-2960

カーチフのカが取れチーフ言の葉も味はひながらシルクを染めむ
三鷹歌農書(二九四一)
絹の布は椿の灰汁に紫根には酢をすこし入れ青を引き出す
三鷹歌農書(二九四二)
布切れを助六由縁江戸桜(すけろくゆかりのえどざくら)その勢ひに紫根染めにす
三鷹歌農書(二九四三)
むらさきの病鉢巻むすび目を助六のみは右に捻つて
三鷹歌農書(二九四四)
ムラサキの根を擂りつぶす疑はず一心に潰すことのみ思へ
三鷹歌農書(二九四五)
カスとても無駄にはできぬムラサキを擂り鉢用の熊手用ゐて
三鷹歌農書(二九四六)
絞り絞り絞り尽くさんと掌(たなごころ)ムラサキ押せど又も根負け
三鷹歌農書(二九四七)
灰汁を取り塵を掬ひてムラサキを鍋にわが子を育つるやうに
三鷹歌農書(二九四八)
佃煮と見紛ふばかりムラサキを煮詰め紫まみれの根つこ
三鷹歌農書(二九四九)
ムラサキにたまり醤油の厳かさ愈(いよよ)染めんとボウルに満たす
三鷹歌農書(二九五○)
作業机を汚してしまひたる染みをムラサキなればアートと見るも
三鷹歌農書(二九五一)
縮緬の切れに絡まるムラサキの重たさ色の深さ染めたり
三鷹歌農書(二九五二)
今紫ともいふ江戸の紫は京の赤みに張り合へる色
三鷹歌農書(二九五三)
京紅のあれば江戸紫ありて青みの冴ゆる江戸の紫
三鷹歌農書(二九五四)
コショウショウショウ、コショウショウショウ唱へつつ苦土石灰を土に混ぜ込む
三鷹歌農書(二九五五)
取り播きの種も幾つかムラサキを土に帰しぬ家出をさせず
三鷹歌農書(二九五六)
ムラサキのしろがねの種条播きに一円玉の間隔保ち
三鷹歌農書(二九五七)
窪に置き土を摘んでムラサキの種に布団を重ねてやりぬ
三鷹歌農書(二九五八)
爪楊枝もて直す列ムラサキの種転がしはゲームにあらず
三鷹歌農書(二九五九)
ムラサキのプランター艦隊整ひぬ冬を眠らせ芽を出すを待つ
三鷹歌農書(二九六○)


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