見出し画像

三鷹歌農書 2721-2740(勝沼)

gyou 米系は黄いろ欧州系は赤これはブドウの紅葉のはなし
三鷹歌農書(二七二一)
わうごんの叢雲空を覆ふなりわれを吸ひ込む甲斐路の椛(もみぢ)
三鷹歌農書(二七二二)
くれなゐの瀑布となりて眼の前に葉落とす前の甲州の燦
三鷹歌農書(二七二三)
腹巻きを巻いてやらんと藁の束盆地のブドウの根元に積まれ
三鷹歌農書 (二七二四)
霜月もみどりを噴くは甲州種樹齢百三十年の甲龍
三鷹歌農書(二七二五)
甲龍の枝を仰げば澄みわたる空いち枚を捕ふる投網
三鷹歌農書(二七二六)
枯れながら幹の捩れるところより髭のごとくに枝出す葡萄
三鷹歌農書(二七二七)
土ふかく宇宙を一つ成してをらむ甲龍の根が包める宇宙
三鷹歌農書(二七二八)
炎立つ葡萄紅葉の真ん中の庚申さまと見つめ合ふなり
三鷹歌農書(二七二九)
くれなゐの雲靡かすや葡萄棚色変はりゆく山のなだりに
三鷹歌農書(二七三○)
海原をなして波立つ紅葉(もみぢ)黄葉(もみぢ)ブドウ畑に連嶺の風
三鷹歌農書(二七三一)
甲州の新酒ふふむやたましひゆ一枚うすき皮の剝がれつ
三鷹歌農書(二七三二)
引き際まで待ちて醸せる葡萄酒の晩秋仕込みのわれでありたし
三鷹歌農書(二七三三)
壜振るや新酒の濁りむらさきの淡き狭霧を喉(のみど)に落とす
三鷹歌農書(二七三四)
甲州がオレンジワインに転生す二酸化炭素浸透法(マセラシオン・カルボニック)の技に
三鷹歌農書(二七三五)
甘えても甘えなくても許さるるあなたのやうなアジロンダック
三鷹歌農書(二七三六)
甲州の紅葉のレッドカーペット丘の上へと音立てながら
三鷹歌農書(二七三七)
採られずに地に落ちもせず残りゐて葡萄の房の風に磨かる
三鷹歌農書(二七三八)
ゴシックの司教座聖堂の列柱の甲州式ブドウ大木仕立て
三鷹歌農書(二七三九)
一枚に十色の赤を散りばめて葡萄紅葉のステンドグラス
三鷹歌農書(二七四○)


いいなと思ったら応援しよう!