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三鷹歌農書 2980-3000

キクイモがローズマリーを引き連れてオーブンに籠りチップスとなる
三鷹歌農書(二九八一)
やるべきこと数へてゆけば刈薦の乱れて何も思ひたくなし
三鷹歌農書(二九八二)
くすぐつて土を落とすは足指の腹のみ見ゆる掘り立てウコン
三鷹歌農書(二九八三)
根茎の先とダンゴムシの玉とウコンを掘れば親子のやうな
三鷹歌農書(二九八四)
カブトムシの幼虫のやう味短歌ヌカは美味いか糠床を混ず
三鷹歌農書(二九八五)
釣り上げし岩魚のやうに味短歌ひとつ糠床から手に取りぬ
三鷹歌農書(二九八六)
糠床の天地返しに今日見るはとつくり芋が抱く味短歌
三鷹歌農書(二九八七)
漬け終へて糠よりくろき山芋と白きままなるダイコンが会ふ
三鷹歌農書(二九八八)
新圃場に日の傾きてシャベルより長くなりたるわが脚の影
三鷹歌農書(二九八九)
使はずと決まり綿実(わたざね)採らぬまま植えたる株をなべて引き抜く
三鷹歌農書(二九九○)
ふはふはの綿花残れる株を捨つ木綿以前の時代を知らず
三鷹歌農書(二九九一)
割れたるは頭か尻か綿の実のましろき絮をみて想ふなり
三鷹歌農書(二九九二)
境界になりゐしマルチ一条を剝がしてゆけり広がる新地
三鷹歌農書(二九九三)
束帯の裾(きよ)をどこまでも伸ばしつつわがトラクター荒地をなほす
三鷹歌農書(二九九四)
漆地に金粉を蒔くここちにて耕しおへし畑に糠を
三鷹歌農書(二九九五)
荒畑にあたらしき顔与へむと輪郭決めて支柱を打てり
三鷹歌農書(二九九六)
イタリアに行けねば作るのみならずトロンボンチーノに歌の翼を
三鷹歌農書(二九九七)
リュート属と今は仲良くしておくれトロンボンチーノよ種取るまでは
三鷹歌農書(二九九八)
農園のスケッチ完成させざるは来年百姓やめられぬゆゑ
三鷹歌農書(二九九九)
武蔵野のか黒き土にたまはりし歌債に耐へよわが四臓五腑
三鷹歌農書(三○○○)


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