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三鷹歌農書 2661-2680

霜月のいのちの祭りムラサキにくれなゐに黄の菊花の車
三鷹歌農書(二六六一)
かの山のいざなふ一枚岩(スラブ)摘芯に摘芯かさね懸崖づくり
三鷹歌農書(二六六二)
今年またサグラダ・ファミリア眼に収む懸崖作りの菊のファサード
三鷹歌農書(二六六三)
一幅の山水見つむ根を滝に岩に這はせて小菊盆栽 #
鷹歌農書(二六六四)
草花に大樹の姿見出して菊もて荒磯あらはすこころ
三鷹歌農書(二六六五)
菊花展の菊の気負ひをやはらげて丁子菊あり軽羹のやう
三鷹歌農書(二六六六)
太管も針管もありブカティーニ、カペッリーニを想ふ昼前
三鷹歌農書(二六六七)
ケーキ派の君と満月派のわれと並んでのぞく一文字菊
三鷹歌農書(二六六八)
天地人三つの菊のひと鉢に天の花のみわづかに高く
三鷹歌農書(二六六九)
花よりも茎見るべしと菊鉢は支柱の見えぬ向きが正面
三鷹歌農書(二六七○)
ふはふはと今日菊咲くは水持ちも水捌けも良き土ありてこそ
三鷹歌農書(二六七一)
七月の末に窒素を抜き始め菊に花のほかは思はせず
三鷹歌農書(二六七二)
多ければ素直にならず多すぎれば菊花は暴る肥料の話
三鷹歌農書(二六七三)
一本にポンと弾ける嵯峨菊の花弁ぜんぶが万歳をして
三鷹歌農書(二六七四)
秋の気を点つる茶筅の端正に背筋伸ばして嵯峨菊を愛づ
三鷹歌農書(二六七五)
極みから崩れはじむる玉響を切り取るさまに伊勢菊の咲く
三鷹歌農書(二六七六)
六クール化学療法(ケモ)終へて目に江戸菊の双子がきそふ波巻きパーマ
三鷹歌農書(二六七七)
全方位に花弁の櫂を張り出して陽へと漕ぎ出す肥後菊一つ
三鷹歌農書(二六七八)
厚走りの流れあふるる花びらに白胡蝶の蕾のやうなるありて
三鷹歌農書(二六七九)
イスタシワトル山頂までの尾根道をだるま作りの菊に見てをり
三鷹歌農書(二六八○)


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