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三鷹歌農書 3021-3040

季節から遅れず進み過ぐるなく柚子の明るき黄の色を採る
三鷹歌農書(三○二一)
万里香(ばんりかう)の大枝を切りマリカかとつぶやきたるは二十歳の男子
三鷹歌農書(三○二二)
あたらしき陽と風を受く籔刈りてメグスリノキの引越し準備
三鷹歌農書(三○二三)
冬薔薇の剪定せむと葉柄を摘(つま)めばわれと同じ冷たさ
三鷹歌農書(三○二四)
深緑のオニヒトデ地に巨大化しサクラジマダイコン抜き頃となる
三鷹歌農書(三○二五)
土の中を闊歩してゐしや股割れのサクラジマダイコンの腰のツイスト
三鷹歌農書(三○二六)
猛(たけ)き葉の兜サクラジマダイコンを抜きてハクサイ二つ侍らす
三鷹歌農書(三○二七)
拍子木にサクラジマダイコン切つて揚ぐ桜島のパワー身に取り込まむ
三鷹歌農書(三○二八)
白鯨と言はねどモリグチダイコンがおでんの鍋に浮かび来たれり
三鷹歌農書(三○二九)
大きさを半分以下に枝減らし刈り込みて欲る薔薇の良き花
三鷹歌農書(三○三○)
使はれず食はるることも無きものも刀豆の莢締まりてゆくに
三鷹歌農書(三○三一)
天鵞絨(ビロード)のムクナの莢ゆぬばたまの暗きひかりを帯ぶる豆出づ
三鷹歌農書(三○三二)
豊穣神(デメテル)を歓待したるピュタロスはラナンキュラスとなりてあなたに
三鷹歌農書(三○三三)
ガーデンに植うるリストにわれの名もあらばすこしは救はれにしや
三鷹歌農書(三○三四)
欲しき種(しゆ)のなかから欲しき株選び花屋に仮の星座をつくる
三鷹歌農書(三○三五)
増えてゆくパズルの小片(ピース)アキレアとペニセタムとを今日は加へつ
三鷹歌農書(三○三六)
クラブハウスを今年は覆ひ尽くすだらう葛を掘り上げ移つてもらふ
三鷹歌農書(三○三七)
支柱より細き若ツル三年ほど経ちて圧し折るばかりに葛は
三鷹歌農書(三○三八)
葛掘りて資材置き場に放り置けば資材に化けてゐたる古株
三鷹歌農書(三○三九)
約束を待ちて或いは忘れ去り人は死ぬもの菊の冬至芽
三鷹歌農書(三○四○)


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