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三鷹歌農書 2641-2660

壁をなす菰樽みぎにブルゴーニュの樽をひだりに進む参道
三鷹歌農書(二六四一)
白菊の大懸崖の迫り来て向かうにつづく厚物の森
三鷹歌農書(二六四二)
檣(ほばしら)に獅子柚子の鈴ふたつ付け野菜宝船朝の光へ
三鷹歌農書(二六四三)
野菜宝船の起こりは江戸の頃といふ今日神宮に十艘余り
三鷹歌農書(二六四四)
天辺はマスクメロンのピラミッド柿梨リンゴ折敷(をしき)の上に
三鷹歌農書(二六四五)
ハクサイを基部にキャベツとカブを乗せ城の石垣積む技ここに
三鷹歌農書(二六四六)
ハクサイの築石ニンジン間詰石これ以上積み上げられぬまで積む
三鷹歌農書(二六四七)
海ゆけば舳先の波の泡立ちの粟の穂の束稔りをねがふ
三鷹歌農書(二六四八)
甲板へ攀づる稲穂の祝亀いま大根の束を乗り越ゆ
三鷹歌農書(二六四九)
投網打ち引きあげたれば跳ねる魚ラッカセイの殻と根つこを飾る
三鷹歌農書(二六五○)
いそのかみふるきに加へロマネスコもドラゴンフルーツも新嘗祭に
三鷹歌農書(二六五一)
奉納の榾木シイタケ見上ぐればその上を野菜宝船ゆく
三鷹歌農書(二六五二)
舷(ふなべり)に立て掛けてある長槍の宝船より芋茎(ずいき)は高し
三鷹歌農書(二六五三)
回廊に北海道から沖縄まで豊葦原の幸勢ぞろひ
三鷹歌農書(二六五四)
晴れわたる十一月のあをぞらへ一本ネギの筵帆を張る
三鷹歌農書(二六五五)
サトウキビを本殿に降ろし帰りゆくか野菜宝船の艫(とも)見えんとす
三鷹歌農書(二六五六)
小忌衣(をみごろも)蘆(よし)に千鳥を袒(かたぬ)ぎてみづから花となる巫女の舞
三鷹歌農書(二六五七)
白と黄の菊の花挿す天冠(てんかん)にあそぶ神あれ代々木の舞の
三鷹歌農書(二六五八)
カサ・アマトリェールを明治神宮にブロッコリもて作るは三鷹
三鷹歌農書(二六五九)
振り撒きてくれし歌種拾ひつつ代々木の舞の巫女を見送る
三鷹歌農書(二六六○)


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