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三鷹歌農書 2881-2900

餅搗きはわれらが神事舞庭と決めし圃場を清め臼置く
三鷹歌農書(二八八一)
ドラム缶と土の竈に火を入れて湯立(ゆだて)さながら湯気を踊らす
三鷹歌農書(二八八二)
ひと晩を水吸はせたる米を入れ角セイロに白き山塊を撫づ
三鷹歌農書(二八八三)
角セイロの餅米の山を平らにし真中に丸く蒸し穴を抜く
三鷹歌農書(二八八四)
水攻めに蒸し風呂責めに鍛へられし餅米が臼に移されんとす
三鷹歌農書(二八八五)
角セイロから解き放たれて臼に米きもちよささうに潰されてゆく
三鷹歌農書(二八八六)
蒸し米を杵かろやかに叩きつつ臼に入道雲盛り上がる
三鷹歌農書(二八八七)
搗きあげる前に半殺しのコメをその味知らぬ子らに取らせり
三鷹歌農書(二八八八)
餅搗きの日のみ野焼きのゆるされて野菜残渣をやんやと燃しぬ
三鷹歌農書(二八八九)
白菊の大輪臼にひらきゆく杵を押しつつ蒸し米ほぐし
三鷹歌農書(二八九○)
小鹿田(おんた)焼はわが好みにて飛び鉋杵を打ちつつ蒸し米潰す
三鷹歌農書(二八九一)
もち米のこれが本物モチ肌を見せて触れさせ食はせてやりぬ
三鷹歌農書(二八九二)
出来よりも遊びを子らに杵持たせ搗きたいやうに搗かせてやりぬ
三鷹歌農書(二八九三)
ひと臼を搗き終へ洗ふ臼の顔こびりつきしは杓文字を用ふ
三鷹歌農書(二八九四)
搗きたてをちぎり絡めむ紅三太、天津青長、紫師舞おろす
三鷹歌農書(二八九五)
餅ひとつ搗くにも世界を取り込みて安倍川にヤーコンシロップ垂らす
三鷹歌農書(二八九六)
臼よりも杵を好めるもち米の未練を断たす杓文字で剝がす
三鷹歌農書(二八九七)
傷みあれば傷をなかつたことにせんか杵に鉋を当て削り取る
三鷹歌農書(二八九八)
直角に肘保てども餅たひらかになりてくれずああ我のごとし
三鷹歌農書(二八九九)
息合はせ搗き手返し手仕上げへと臼に生まるるしろき満月
三鷹歌農書(二九○○)



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