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三鷹歌農書 2921-2940

冬富士を眺め紅富士羊羹をいただきながら新年の茶を
三鷹歌農書(二九二一)
生き延びてゐること忘れナーベラーとムクナ豆とが睦月の空に
三鷹歌農書(二九二二)
麦畑に栗の葉降れば競艇を始めむと見てしまふかなしさ
三鷹歌農書(二九二三)
冬バラの枝に釣鐘卵鞘はオオカマキリのもの剪らずおく
三鷹歌農書(二九二四)
武蔵野の冬のど真ん中に紅菜苔(こうさいたい)茎のむらさき黄の花あまた
三鷹歌農書(二九二五)
サフランのストイックさを見習はむ寒さに太り太る球根
三鷹歌農書(二九二六)
這ひつくばり赤ぐろき葉を溶かしつつルバーブ冬の眠りに入りぬ
三鷹歌農書(二九二七)
てのひらにソバの実並ぶその硬さそのかたち時間の塊として
三鷹歌農書(二九二八)
悠々とサクラジマダイコン噴火して白き頂から四方(よも)へ葉を
三鷹歌農書(二九二九)
地界から天界にタッチダウンせりサクラジマダイコン一つ引き抜く
三鷹歌農書(二九三○)
土屋(つちむろ)に種芋を埋むキクイモに脳の移植は毎年のこと
三鷹歌農書(二九三一)
又の名を守口大根とふ鞭はぶつ切りにしておでんにも良し
三鷹歌農書(二九三二)
寒晒しの紅妃の尻の波打つを手に取り皮をむき齧(かぶ)り付く
三鷹歌農書(二九三三)
アブラナ科踏ん張る冬のなかんづく紅きケールのチアリーディング
三鷹歌農書(二九三四)
金時草と無花果の葉の冬の陽に透けて挿し苗机の脇に
三鷹歌農書(二九三五)
サクラジマダイコンに水、豆乳に絹ごし豆腐混ぜてとろとろ
三鷹歌農書(二九三六)
ぬばたまの黒き焔の冬空ゆムクナ豆熟れ天降(あも)りたりけり
三鷹歌農書(二九三七)
擦りおろしヤーコンを漉す汁取ると絞る布巾の胃ぶくろのごとし
三鷹歌農書(二九三八)
シロップにせむと絞れば待ちきれずヤーコンのジュースを好む子も
三鷹歌農書(二九三九)
フローラルミネラル増せる糖蜜よヤーコンシロップ華やかなコク
三鷹歌農書(二九四○)


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