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三鷹歌農書 2961-2980

即身仏仰ぎ拝まむヘビウリとヘチマ干涸び冬の陽に照る
三鷹歌農書(二九六一)
リュート属らしきチコリの根のあれば焙じて聴かむコーヒーにせり
三鷹歌農書(二九六二)
育ち過ぎしルートチコリに洞ありて胃の腑の襞をわれに思はす
三鷹歌農書(二九六三)
コーヒーに野菜のあまさ留めむとルートチコリの深煎りはせず
三鷹歌農書(二九六四)
歌ばなしせむとをみなの友ふたり来たりバラ茶は黄と青選ぶ
三鷹歌農書(二九六五)
冬の田の土を起こせば土色のクビキリギス出でて元に戻せり
三鷹歌農書(二九六六)
一ぐわつのブラックベリーの葉の上にエメラルド色のカメムシひとつ
三鷹歌農書(二九六七)
枯れざまを晒す一輪冬バラの華厳の滝を月照らすなり
三鷹歌農書(二九六八)
おのづからオーギュスト・ロダン『接吻』になりて絡まる白秋二本
三鷹歌農書(二九六九)
いきいきとうごかぬ海月ふゆの菊枯れはてて根のゆたかに深し
三鷹歌農書(二九七○)
おとうとと妹目守(まも)る長子とも味短歌三つ並んでゐたり
三鷹歌農書(二九七一)
弟がいもうと抱つこせるままに味短歌三きやうだいの収穫
三鷹歌農書(二九七二)
ダイコンの隣り合へるを引き抜けば胴にまたがる白き両脚
三鷹歌農書(二九七三)
黒ボク土の暗闇を出て冬の陽に干し大根のくつろぐ姿
三鷹歌農書(二九七四)
専用の床に招きて味短歌余情増せよと糠漬けにせり
三鷹歌農書(二九七五)
糠床の半固形なる荒波に味短歌沈みあらたな旅へ
三鷹歌農書(二九七六)
ハクサイの外葉の芯のしんなりと茹でてから干す帆となれ우거지(ウゴジ)
三鷹歌農書(二九七七)
ダイコンの首の付け根を切りて湯に頭足類を鍋に遊ばす
三鷹歌農書(二九七八)
土からも根からも離れ湯に泳ぎダイコンの葉の시래기(シレギ)に羽化す
三鷹歌農書(二九七九)
韓くにへ冬の荒波浴びずとも武蔵野にわが시래기(シレギ)と우거지(ウゴジ)
三鷹歌農書(二九八○)


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