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三鷹歌農書 2801-2820

あたらしき地平となるか生産を続けられざる緑地受けよと
三鷹歌農書(二八○一)
貝殻が乾きて空に揺れてゐるシロゴチョウの花冬来て死せり
三鷹歌農書(二八○二)
複眼の枇杷が次々目をひらく空気凜々たる季節となりぬ
三鷹歌農書(二八○三)
本年もお疲れ様でしたと静匂(しづかにほひ)が紅葉打ち上ぐ
三鷹歌農書(二八○四)
ダアリアの蕾は斯うもローゼルの実に似る今年植え忘れたる
三鷹歌農書(二八○五)
焦らずに駿河台匂(するがだいにほひ)染まりゆく冬の絹雲など呼びながら
三鷹歌農書(二八○六)
洋梨(ポワール)を剝くたのしさと冬瓜の歯応へ想ひハヤトウリ煮る
三鷹歌農書(二八○七)
ラッカセイ炒らむと殻を包丁の背で打つ役と片付ける役
三鷹歌農書(二八○八)
ひと掘りにごろんごろんとデジマ出て親分格と拳を合はす
三鷹歌農書(二八○九)
農林1号、北海31号が祖母と母知りてデジマの素性も舌に
三鷹歌農書(二八一〇)
枯れてなほ蝋梅のごとしダアリアの色失せかたちのみ残りゐる
三鷹歌農書(二八一一)
水を張り一文字菊浮かべたり花のたましひ空に帰さむ
三鷹歌農書(二八一二)
静匂(しづかにほひ)駿河台匂に万里香もみぢ揃ひて和音のごとし
三鷹歌農書(二八一三)
枇杷の花しろく朝(あした)の月白く冬も取り残こされゐるわれか
三鷹歌農書 (二八一四)
マドンナは剝かれはれひめ顔を出す二つともわれに食はれんとして
三鷹歌農書(二八一五)
またわれに選択せよと枯露柿(ころがき)と全きままなる百目が皿に
三鷹歌農書(二八一六)
マドンナところ柿皿に一口を残し寄り添ふ比べられつつ
三鷹歌農書(二八一七)
ちはやぶる神の柿なれ木星(ユピテル)と水星(メルクリウス)に百目と信濃
三鷹歌農書(二八一八)
信濃柿ブドウガキともλωτός(ロートスの木)の説もありマメ柿見上ぐ
三鷹歌農書(二八一九)
Diospyros kaki(ディオスピロス・カキ)の季来たりちはやぶる神の穀物なる柿と知れ三鷹歌農書(二八二〇)


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