終わる日記(2024/10/07)
2024/10/07
目。ヒトの目には、いわゆる黒目と白目があり、黒目の中心には瞳孔がある。虹彩は、瞳孔の周りにあるドーナツ状の部分のことで、瞳孔の開き具合を調整することで眼球に入る光の量を調整している。目の奥に広がっている膜は網膜とよばれ、カメラでいうフィルムの役割を果たしている。瞳孔の奥にあり、カメラのレンズの役割を担っているのが水晶体で、外部からの光を屈折させて対象物のピントをあわせることができる。これは毛様体筋という筋肉による働きによっている。毛様体筋の働きで水晶体が引っ張られたり緩められたりすることで網膜で結像するように厚みが変わり、対象物にピントを合わせることができるのである。いわゆる近視のひとというのは、この水晶体の機能の衰えで裸眼では網膜に焦点が合わなくなってしまっている状態で、そのために眼鏡やコンタクトレンズといった矯正器具を必要とする。これは、水晶体に加えてその手前にさらにもう一枚レンズをかますということを意味し、それによって網膜で結像させることができるようになるわけだ。
眼底写真は眼科などで撮影することができるが、ヒトの眼底写真をみると、中心には中心窩という周囲の網膜より少しへこんでいる部分がある。網膜の中心には視力がとても鋭敏な一点があり、この一点が中心窩である。その外側には、視神経の神経線維が集まって眼球の外へと出ていく部分があって、これは視神経円板という。
用語の説明が続いて恐縮だが、網膜には二種類の視細胞があり、錐体細胞と桿体細胞とよばれている。錐体細胞は細かいものを見分けたり色を識別する細胞で、網膜の中央付近に局在している。杆体細胞はおもに光の明暗を感知する細胞で、中心窩を除く網膜全面に分布する。視細胞の分布密度をみると、錐体細胞(cones)は視野角(離心角)の0度付近、すなわち網膜の中心付近に鋭いピークをもつ関数で描かれ、つまりは網膜の中心付近に局在して分布していることがわかる。数字で言えば、ヒトの網膜あたりの錐体細胞の数は5×10^6個程度である(つまり、全視野角で積分したら5×10^6になるということ)。一方、桿体細胞(rods)は中心付近にはほとんど分布しておらず、周囲にブロードに分布する。網膜あたりの桿体細胞の数は10^8個程度である。分布密度のグラフにおいて、視神経円板のあるところ、およそ鼻側15度くらいには細胞がまったく存在しない。すなわちそこでは分布密度がゼロであり、これが盲点である。白い紙に黒塗りの星マークをたくさん書いて片目で隠しながらもう片目で探すと星がふっと消える瞬間があるが、これが盲点である。ぐだぐだと長ったらしい説明が続いていて、そろそろ読者も疲れはじめてきた頃だという。これも盲点である。
網膜あたりの視神経出力は1.5×10^6個程度、つまり1.5Mpixelsで、これは最近のiPhone(iPhone 15)の出力48Mpixelsより劣っているらしい。
杆体細胞は弱い光に反応できる。そのため、光の強度に応じて暗所では杆体細胞が、他方、明所では錐体細胞がおもに機能している。網膜の中心に近い部分には暗所視の桿体細胞がほとんど存在していないため、暗いところでは中心よりもそこからちょっとズレたたところのほうがよく見えるらしい。ほんとうにそうなのか、あとで寝る前に試してみよう(覚えていれば、あなたも寝る前に試してみてほしい)。
ヒトの目において、外からの光が光センサの視細胞に届くまでのあいだには神経節細胞と双極細胞があり、視細胞層が目の奥にあるのはいろいろのムダがあって都合が悪そうに思える。盲点もある。他方、頭足類であるイカやタコの目においては、視細胞は目の手前側にあり、盲点は存在しない。ヒトの場合は脳の一部として、イカやタコの場合は皮膚の一部として目が発生したという歴史を持つ。進化的に違うものが収斂して、結果的に目として光を感受することになった。目の奥から栄養をもらえるため、視細胞層が目の奥にあるヒトの目は、栄養補給がしやすいのが利点のひとつであるといわれている。
色感覚の起源である視細胞の波長選択性について。ヒトの錐体細胞は三種類あり、吸収する光の波長が短いものからS錐体、M錐体、L錐体とよばれる(それぞれ、Short、Meadium、Longの頭文字からきている)。S/M/L錐体。それぞれの錐体の吸収特性は異なっており、眼に入った光がどのような波長成分を持つかに応じて各錐体が興奮する。そして、各錐体の活動度の相対的な違いが脳に伝わって処理され、色として知覚される。S錐体(青)(S/M/L錐体を便宜的に青/緑/赤で表す場合があるが、S/M/L錐体が青/緑/赤に直接対応するわけではないことに注意。いわゆる光の三原色は青と緑と赤で、この3色がすべて混ざると白色になる)は全体の2パーセント程度と少ない。
黒地の背景に青色で書かれた文字が読みづらいことは経験的によく知っているが(なお、この文章は白地の背景に黒文字で書かれているにもかかわらず読みにくいわけだが、このことについては別の説明を要する。もちろん、基本的に白地に黒文字だが、読者それぞれの環境によって背景と文字の色は違ってくるはずだ。しかしいずれにせよ、別の説明を要することには変わりあるまい。)、これはS錐体(青)の数がM/L錐体(緑、赤)に比べて著しく少ないことに起因している(S錐体は全体の2%程度)。S錐体は、文字を読むような中心窩にはほとんど存在しないため、青い光の有無でしか視覚できないものは読むことができないのである。また、白地の背景に黄色い文字というのもやはり読みづらいわけだが(スライド作りなどで注意されたことのある人も多いだろう)、これは背景(青、緑、赤)と文字(黒、緑、赤)との競合において緑と赤は共通で、問題となるのは残りの青と黒の識別であり、結局のところは先の話に帰着されるからで、ゆえに白地に黄文字は読みづらいのである。
帰り道、商店街を歩いていたら、オープニングセール! おにぎり2個ご購入のお客様に、お茶と名物だし香る玉子焼きプレゼント! と書いてあって、店の前に長蛇の列ができている。あちらのお兄さんの後ろへと言われるので列に並んだ。
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