農業日誌「根雪前の大雨による影響」
はじめに
11月も下旬に差し掛かり、2021年も残りわずかとなりました。
北海道では既に地域によっては積雪が深いところもありますが、十勝はまだまだ雪が積もる気配はありません。風は強く肌寒いものの、今日もカラッとした快晴でした。
さて、今年の根雪前のこの時期は、どうにも例年に比べて雨が多いようです。
その影響が、秋まき小麦の栽培に出てきます。
⬇︎「秋まき小麦」についてはこちら。
当農場では、小麦が冬を無事に越せるようにと、10/27に雪腐病防除(殺菌剤の散布)を終わらせて冬支度に入っていました。
ですがここ1ヶ月の大雨の影響により、防除作業のやり直しをする必要がでてきました。
今回は、気象庁のアメダスのデータを見ながら実際の降水量を眺めてみることにします。
小麦の雪腐病防除
北海道の小麦栽培にとって、毎年気温や積雪量といった条件の変わる冬期間を健康なまま越せるかどうかが、まず最初の山場となります。
秋まき小麦が冬をうまく越せない原因の一つに「雪腐病」があります。
その字面からも想像できる通り、冬期間に病原菌により小麦が腐って(枯れて)無くなってしまう病気です。
積雪下で菌類(カビの仲間のようです)が蔓延することにより、それが翌年の収量減少や品質低下の原因となってきます。
そしてこの病気を防ぐために殺菌剤の散布を行うのが「雪腐病防除」です。
難しいのが、散布するタイミングです。
早く散布しすぎても根雪前に薬効が切れてしまうし、かといって遅くまで待って散布しようとすると雪が降り散布できなくなってしまう、ということにもなります。
降水量と残効の目安
雪腐病の対策となる具体的な薬品としては「フロンサイドSC」が残効性が高く、よく活用されていますね。
この殺菌剤の薬効は種類にもよりますが、しっかり効かせるためには散布日から根雪始めまでの「積算降水量」と「日最大降水量」が重要になってきます。
大量の雨によって流れてしまうと効き目がなくなってしまう、というイメージでしょうかね。
(実際もっと複雑な機構だと思います。他にも積算温度も関わってくるというのも聞きました)
こちらが、フロンサイドSCの公式ページに載っている情報です。
(参考:石原バイオサイエンス株式会社の技術資料より)
簡単に整理すると、散布してから根雪までの期間に以下の降水量の値を超えると、効果が無くなってしまうという目安値です。
【フロンサイドSCの残効の目安】
・積算降水量:120mm以上
・日最大降水量:65mm以上
それでは実際の降水量がどうだったかをアメダスのデータを使って見てみます。
ここ1ヶ月間のアメダスで見る降水量
ここ1ヶ月の僕の地域のデータを確認してみました。
アメダスの気象データは、気象庁のWebページの「各種データ・資料」タブから「過去の地点気象データ・ダウンロード」より、地点・項目・期間を選んでcsvでダウンロードすることができます。
以下は、降水量をスプレッドシートに取り込んでグラフ化してみたもの。
期間は1ヶ月間と言いつつ、実際には10/27〜11/24で抽出しています。
(当農場での防除日が10/27だったため)
30mmを越える雨量の多い日が3日ありましたね。
ただし日最大降水量、つまり一日に65mmを越える日はありませんでした。
次に、以下は積算降水量を表にまとめたもの(一部)。
こちらを見ると、やはり11/22の30mmを超える降雨で、薬効の目安となる積算雨量130mmをしっかりと超えてしまいまっていますね。
参考までに、昨年(2020年)の同期間の降水量との比較のグラフも。
今年の雨量が多いというのが一目瞭然ですね。
積算降水量を算出してみると、昨年は17.5mmしかありませんでした。
どうにも天候には敵わないものですね。
おわりに
今回は、実際のアメダスデータからここ1ヶ月間の降水量を見てみました。
この時期に続く大雨による影響は、実際には小麦だけでなく長芋収穫作業の進捗なんかにも響いています。
これから機を見て農薬の再散布を行うのですが、どうにもこの時期はしばれが入っていたり気候条件が悪くなっています。畑に入るのが難しくなっているため、無人ヘリ散布を委託することにしました。
こういう時に、自身でドローン散布ができると強いのでしょうね。
また今回は必要とわかってから気象データを確認しましたが、普段から継続してアメダスデータを活用することができれば、もっと早く正確な対策が打てたりするのかなー、なんて思います。
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