一回死んで生まれ変わった話5/6
-家族-
私の身体は確実に「死」の準備を進めていました。
食欲が無いのです。
どんなにメンタルや体調を崩そうが食欲だけは失ったことのない私が、食欲を失ったのです。
食べたいものがない。今まで美味しいと思っていたものが美味しくない。立ち並ぶ料理店を見ても入りたいとも思えない。
大好物のチョコ菓子が冷蔵庫の中に一週間以上残ってるなんて、かつての私にはありえないことでした。
身体も動かない。
迫り来る死への焦りから眠れない夜。
しんじゃう、しんじゃう、早く、死んじゃう前になんとかしなきゃ
そんな思いで個展スペースをつくりました。
確実に「死」への準備が自分の中で整った時、私は数ヶ月ぶりに家族に電話をかけました。
私の気持ちなんてきっと理解してもらえない。
本気で死にたい人の気持ちなんてわからないくせに。
そんな気持ちで少し拒絶していました。
会わなくてもいい。会わずに死んじゃった方がいい。というか、会わす顔がない。でも死ぬ前に、せめて声だけでも聞かせてあげないと。
わたしは今幸せだよ。
やりたいこと全部やり切って、人間も怖くなくなって、自分のこと好きになれたんだもん。幸せなまま死ぬんだよ。
だから心配しないで。
そう伝わればいいなと思いました。
久しぶりに話す家族は優しかった。
帰っておいで、ゆっくり休んだらいいよ。
そう言ってくれました。ああ、死ななくてもいいのかもしれない、そう思いました。
すっからかんになって実家に帰って、第二の人生を始めたらいいのか。
ずっと夢だった犬と暮らすスローライフが送れるのか。ありだな。
そうだった。私は色々リセットするたびに、「いっぺん死んで生まれ変わった気持ちで頑張ろう」そう奮い立たせていました。
もう一回生まれ変わったらいいじゃないか
そう思えたんです。
私の好きなアイドルZOC(METAMUSE)の「メタメメント」にこんな歌詞があります。
死んだら死ねなくなるから生きてるうちに死ぬことすら楽しんじゃうの
人間は生きている限り、何回でも死んで何回でも生まれ変わることができるのです。
リセットしたっていい。
誰かを裏切ったっていい。
生き延びるための手段なのだから。
図太くないとこの世は生き残れない。
死ぬな、なんて言わない。
何回も死んで、何回も生きろ。
私はこれからも生きる。
(続く)
カバー画像 : 自作
今回の展示作品『大嫌いな姉へ』(2023年)
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