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新しい道#8 〜焼き加減には気をつけたい〜

9/4(日)

-とある昨日のできごと-
あごひげぺんぎん「すいません、明日の午後から市民スタジオお借りしたいのですが」
受付「はい、空いていますよ。団体名は?」
ぺ「全部ひらがなで、"あごひげぺんぎんとゆかいななかまたち"でお願いします」
受付「あご、ひげ…??ぺ、ぺ…?なんですか?」
ぺ「全部ひらがなで、"あごひげぺんぎんとゆかいななかまたち"です」
受付「あごひげ…はあ、ぺんぎんですか…」

そして今日。
大阪フィルハーモニー会館、通称大フィル会館にやってきた。
新しい弦、と弓の音をもっと色々研究したかったから、遠慮なく音を出せるスタジオを借りたのだ。ここ大フィル会館は結構リーズナブルで気に入っている。

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大フィル会館はこんな感じで外に団体名が掲示される。一度本名で契約したらこんな感じで掲示されるもんだから、私のお葬式みたいな雰囲気が出ちゃったのだ。それ以来この団体名だ。

今日のメンバーは、僕の秋冬シーズンをブラームス交響曲全曲ツアーにする片棒を担いでいるバイオリンのK瀬くんとビオラのM浪さんだ。僕らは今カルテットを組もうとしているのだが、チェロパートが空席のままだ。誰か一緒にアンサンブルをしてくれるチェロの悪友募集中だ。

この日は主にハイドンの五度、G線上のアリア(g線で弾くとは言っていない)、それと僕らが一緒に出演するオーケストラフィエスタのブラームス交響曲1番の3楽章だ。

五度はほぼ初見な上、刷った譜面が手書き譜で読み辛かったのですぐに弾くのをやめた。
G線上のアリアは来週神山交響楽団の現役生と一緒に演奏することになっていたので、軽い打合せも兼ねた。
聞くとこによると大学から楽器を始めたキャリア2、3年目の子達も来るという。
そんな子達の前で、我々おじさん達がヘマをこいてはいけないので予行練習という訳だ(ちょっと大人気ない)。
G線上のアリアは昔から苦手だ。急に拍感がなくなる。この日も何度も迷子になった。
それでも3人でスコアを見ながら「ビオラをちゃんと聴こう」「ここのパートちょっと音短いかも」「そこの音キビキビしすぎないで」だのあーだこーだ言い合いながら少しずつ合わせていく。僕はこの過程が愛おしくてたまらない。
なぜならこの指摘は非難ではなく、互いに音楽を中心とした歩み寄りだからだ。僕らはこの音楽を中心に、ぐるぐると衛生軌道上のメロディをリズムにのせて輪るのだ。

もうお互いある程度の付き合いなので、こいつらなら気を使わずにバシバシ指摘しあってもいいだろう、と思う仲だ。3人共もっといい音楽にしよう、と同じ方向を向いているからこそできる事だ。幸せなことだ。
一緒にこういう事をしたいと思う、チェロが好きな、悪い奴募集中だ(良い奴が1人くらいいた方がいい気もする)。

それからブラームス交響曲1番だ。
K瀬くん「おれまだ4楽章くらいしかさらえてないよー」
ぺんぎん「じゃあ3楽章練習するかあ」
K瀬「話聞いてた?」

という訳で3楽章の練習。
ブラームス交響曲1番の3楽章、なんと、なんと愛おしい…
冒頭の弦の伴奏のなんと優しいことか。2ndバイオリンのこの32小節目がなんとも愛らしい。僕はここを聴くと満たされた気がして、いつもここで涙がでそうになる。


もっとダイナミクスをつけよう、楽章のニュアンス的にもっとこうしよう、みたいなざっくりした事だけに留めたが、それでもこの3人だけでブラームスの音楽を垣間見た気がしてとても幸せだった。

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気づけば夕方の17時。カーテンの隙間からあたたかな夕陽が差し込んでいた。
片付けをして大フィル会館を後にした。

その後は焼き肉を食べながら、しょーもないなんやかんやを話をした。内容はあまり覚えていない。

その日が音楽を楽しんだこと、それを思い出しながら食べた肉が美味かったこと。
それだけ覚えていればいい。

思い出は続いてるのだから。

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