二本立てで読む、ひと夏の旅――佐原ひかり『ペーパー・リリイ』『人間みたいに生きている』
単行本刊行が決まった頃、Twitterで著者自身が、この2作は全然テイストが違うので読者は混乱するかも、というようなことを書かれていたのだが、読了後、私には「え?同じじゃない?」と感じられた。
『ペーパー・リリイ』(以下、「ペパリリ」)では、実際に遠くの土地へと旅に出かける。
『人間みたいに生きている』(以下、「人みた」)では現実の移動距離こそ小さいものの、唯は深い心の旅に出ている。
横と縦のベクトルは違っても、いずれも実は「ひと夏の旅の物語」だ。
で、執筆時期がほぼ同じだったとも知って、なるほど、これは相互補完する物語なのではないか?と思ったのだ。
「ペパリリ」読了後、ヨータの描写にやや物足りなさを覚えて、彼のその後についてももう少し読みたい、書かれ足りていない?ような気がしていたのだが、それは「人みた」を読んで解消された。
ヨータから唯へとバトンタッチされていたのだな、と。
受け継がれているのは、自分がいわゆる「普通」じゃないのを隠していること、人に言えない悩み、ついでに吐いてしまうこと。
表向きの性格は真逆だが、ヨータと唯の悩みはほぼ共通していて、私が知りたかった「それにどう対処していったか」が読めるようになっていた。
そして自分自身に対する向き合い方では、唯と「ペパリリ」のヒロイン・杏とが共通している。
どうしようもなく持て余していた「自分」を、偶然出会った年上の人物とのあれこれを通して、違うようにも捉えられるようになっていく、そこは同じではないだろうか。
だから、「人みた」は「人外(にんがい)」の話ではなかった。
どこまでも「人間」の話だった。
余談だが、私は泉さんのヴィジュアルイメージを、完璧に「中村倫也」で読んでいた。
実写化される時には、ぜひ配役をお願いしたい。
(異論は認める)