電車の中に乗って。

 知らない街の公園で突然置いていかれる。もう前半部分を忘れかけている。友達か親がいたはずなのに、公園で置いていかれたのか。

 最後は少し覚えている。電車に乗って友達と(ゆーと)と二人で家に帰ろうとすると、なぜか電車の車掌が死んでしまう。これがまた電車というにはあまりにもおかしな形状で、まるでゴンドラみたいな箱型の物体、または数人しか乗れない遊園地の箱型のアトラクションみたいな物体が自分達の近くに故障した状態で現れる。勿論そこには線路がない。ただ斜めにかしいで仰向けになった機体の扉が開くと、中年の髪を短く刈ったおっさんが死にかけていて、辞世の句ならぬ遺言じみた言葉を残す。俺の後を継いでくれみたいな。なぜか彼を見届けた後に、電車に乗り市街を走り抜ける。雨が降っている。突然周りに、蟹が現れる。蟹はリアリティがなくゲーム的な見た目をしていて、何故かうつ伏せに倒れていて、その背中に奇妙な凸凹の突起が光っている。また大きさは巨大で一般自動車より大きくトラックよりは小さいほど。それを見届けながら、死の予感を覚えて電車を降りようとする。電車の窓や扉から顔を出して、その先にあるものを見ようとする。トンネルでもあるのだろうか。その先には津波のようなものが都市の水平線のビルの上に見えるような気がする。しかしはっきりしない。豪雨と天気の悪さ視界の悪さと、現実感の無さが認識を拒んでいる。どうも電車が家までつかない必然性を確信していて、滅びの予兆を確かめようとしている。前半の公園と、友達と出会った帰り道との乖離が見られる。

 家に帰れない気持ちと、論理性のない闇雲な展開がある。ただ後から見返すと、帰り道の途上で、障害に巻き込まれているように見える。書き割りのような街。自分の都市への認識の低さを表している。公園ではなく河川敷に忍び込んで、何かをする目的があった。

 思い出した。友達の家に遊びにも行った。ご飯を食べた気がする。早く帰らなければならないと思いつつ、喋っていると親が来てこの親がまた白髪で妙に歳をとっていた。ご飯を、鍋か寿司か豪華なものだった気がする——食べさせてもらって……。全体的にいくつかの一貫性は認められるのだが、それらを映像的に認識する能力に欠けている。夢に文句を言っても仕方ないが経験による脳細胞の活性化が不足していると推測できる。


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