ティッシュしゃぶしゃぶは仙豆【美食&奇食を食い尽くすグルメハンター嵐】
今月よりこのアジトにてコラムを執筆させていただきます、嵐と申します。
嵐と申しましても、別に自分がイケメンだとか、某国民的アイドルグループの誰かに似てるだとか、そんな不遜な気持ちでこの名前を名乗っているワケでは一切ありません。
僕の本業は「パチスロライター」という、無気力・自堕落・非生産、そんなダメ人間を地でいく徒花のような仕事をしておりまして。その職業におけるライターネーム、いわゆるペンネーム的なモノを、パチスロライターを始めるときにこのアジトで【大阪ストラグル】を執筆されている射駒タケシさんに「本名が五十嵐やから嵐でええんちゃう?」と、圧倒的閃きの果てに名付けていただき、もう17年以上もこの面さげて恥も外聞もなく名乗らせていただいている次第であります。当時はまだ春高バレーでグループ名にもなっているあの代表曲が流れる前であり……決して意図的に「あの大人気グループと同じ名前にしておけばワンチャン何かしらのおこぼれにあずかれるんじゃね?」とか、邪な気持ちがあったワケではないことを、この場を借りて天地神明に誓わせていただきます。
天地神明に誓わせていただきます。
大事なことなので2回言わせていただきました。
というワケで、(偽物のほうの)嵐が今回よりお届けさせていただく「超絶現場主義体験型コラム」――その名も、
この世の美食も奇食も全て食い尽くす!
グルメハンター嵐
でございます。
大きく出たな、と。我ながら大言壮語だな、と。言ってる内容のわりにはタイトルの響きに捻りが全くないな、と。いささかそんな風にも思いますが、本コラムは、その名の通り、この僕・嵐があらゆる食べ物をこの口で、この舌で味わい、レポートさせていただくグルメコラムとなっております。
ぶっちゃけ、
「四十路のオジサンの食レポなんてまったく興味がない」
そんな声が地球上のありとあらゆる地域、遠くブラジルのサンパウロあたりからも聞こえてきそうですが、安心してください。
ぶっちゃけ僕もそう思っています。
でも、どうかもう少し聞いて下さい。本コラムのテーマは「この世のあらゆるモノを食べ尽くす」なのです。そのため、普段ならデヴィ夫人くらいしか口にできないような超絶ブッ高い超高級料理や、一部地域では貴重なタンパク源であるイモムシの蒸し焼きなど、とにかくなんでも食ってレポートする……と、まぁこうなるワケです。
つまり僕は皆さまの人身御供。
皆さまがご興味のあるものを、皆さまの代わりにこの口で咀嚼し、胃袋へと流し込み、五臓六腑の奥から言葉を紡ぎ出して詳細に伝えさせていただこうと考えております。ですので、「アレ、1回食べてみたいんだよなぁ~アレ」とか「コレは流石に自分ではたべないなぁ~」などなどの食材・料理がありましたら、よろしければコメントなどで教えていただけると幸いでございます。
ただもちろん、僕も生身の人間ですから、毎回そんなモノばかり食べていたら、財布が壊れたり、胃が壊れたり、ココロが壊れたりするかもしれません。
そういった高級食や奇食だけでなく…
身近にあるけどなかなか入る勇気が出ない古びた食玩を飾った商店街の中華料理屋さん。
実際に現地に行かないと味わえない、ご当地食や取れたて新鮮食材。
シチュエーションが最高の調味料になるキャンプメシ。
…などなど、とにかくありとあらゆる食を、このコラムを読んでくださった皆さまに疑似体験していただけるように、全力レポートさせていただく予定です。
ちなみに取材費はオール自腹。
原稿料は雀の涙(あくびver.)。
…このコラムが続けば続くほど、経済的破綻がひたひたと忍び寄ってくる予感がしなくもないですが、読んでくださった皆さまが
「面白い!」
「食べてみたい!」
「ガチでこんなん食ってるw」
という風に楽しんでくださることが、僕にとっては究極であり至高の食材。そんな美味しすぎるお言葉をお腹一杯にたいらげられるよう、これから日々精進させていただきます!
…ちなみにコレは、僕の偽らざる本音であり、決してアジトの担当編集に言わされている言葉ではないことを、天地神明に誓わせていただきます。
まあ、これは大事なことではないので2回は言わないですけども。
察してください。
…と、自己&コラム紹介が長くなってしまいましたが、ここまで飽きずに読んでくださった皆さまに、とりあえず最初の食レポを。
アタクシが高校2年生のときにいただいた寄食
「ティッシュしゃぶしゃぶ」
について、今回は軽くお伝えさせていただきます。
あれは高校2年生の頃でした。正確には1回目の高校2年生の頃……。えっ、2回目があるのかって? ……あるんです。察してください。
とにかく、若気が至りまくっていた僕は実家を飛び出して8ヶ月ほど放浪生活をしていました。要は家出ってヤツです。家出をしたはいいものの、当然のことながら17歳の学生に経済力などあるハズもなく。
次第に困窮し、放浪生活の終盤は蛇口からひねり出される真水オンリーで飢えをしのぐ生活を送っておりました。そんなときに、とある友人からこんな話を小耳に挟んだんですよね。
「ティッシュって、しゃぶしゃぶしたら食えるらしいよ?」
その瞬間、17歳の嵐に走っちゃいましたよね。電流。
ティッシュなんて、人出の多い駅前に繰り出せば、労せず大量にハントできる食材の一つ。
「英会話いかあすっか~」
と、“が”もハッキリ言えないくらいにやる気のカケラもないティッシュ配りのお兄さんを見つけられれば、一つや二つなんてケチな話じゃなく、箱ごと譲り受けることだって可能なお手頃食材ですからね。
食らう…ワイはティッシュを喰らうんや~! とばかりに書を捨て街へ出て、駅前に大量発生しているお兄さんから受け取りました。大量のティッシュを。
ティッシュと夢をポケット一杯に詰め込んだ嵐少年は、足早にヤサへと戻りました。ちなみに当時のヤサは、放浪の果てに転がり込んだ実兄のアパートです。
部屋に入るなり、台所にあった一人用の小鍋に水道水を勢いよく流し込み、獣のようなうなり声をあげるお腹をなだめながら、お湯が煮立つのをひたすらに待つ。
体、特にお腹というのは正直なモノで、何も食べられない期間が長いと観念するのか、借りてきた猫のように大人しくしています。しかし、「これから何か食うみたいだぞ? 久々の獲物がくるぞっ!!」となった瞬間に、狩り直前のライオンのようにけたたましい咆哮をあげはじめるんですよね。
腹にライオン飼う前に兄貴に飯食わせてもらえばいいじゃん、という声が聞こえてまいりますが、今となっては僕もその通りだと頷くことしきり、しかし、当時の彼は少しバカ、かつ思春期の歪んだ意地もあって、実兄に頼るは寝床のみ…雨露さえしのげればあとは自力で生きていくぜ……などと中途半端なハードボイルド精神を貫いており、経済的な援助は一切受けていなかったです。
そんな僕が、久しぶりに口にできるご馳走です。しかも、しゃぶしゃぶです。
しばらくしてグラグラとお湯が煮立ち、ついにその準備が整いました! 友人から聞き出し、脳に刻み付けたノウハウを思い出しつつ、いざ実食の時です。
〇ティッシュは軽く湯をくぐらせるだけでOK
〇ティッシュがしんなりしたらお湯から出して、醤油を2~3滴垂らす
〇噛まずに“のどごし”を楽しむのがオツ
上記の全てを厳密に守りながら、アツアツにしゃぶしゃぶされたティッシュを火傷しないようにフーフーして、僕は飢えた獣の待つ臓腑へと躊躇なく送り込みました。
すると…
あれほど五月蠅かった獣は驚くほどグゥの音もあげなくなり。
代わりにおとずれたのは、背骨の芯から全身に波及するようなマグニチュード7クラスの身震い。
その瞬間、嵐少年は察しましたよね。
「あ、コレは食べ物じゃないぞ。食べちゃダメなヤツだぞ」
と。
端的に表現するなら、口とか胃じゃなく、細胞レベルで摂取を拒否するような感覚ですね。
いままでに感じたことのないような身震いは、おそらくガチギレレベルでの体からの警告なんだと思います。
そのせいでか…ティッシュしゃぶしゃぶを口にするまでは、狂おしいほどの空腹感を覚えていたのに、一口食べた途端に、嘘のように空腹感がなくなりました。
「こんなモノを口にしなきゃいけないくらいなら…俺たちもうワガママなんて言わないよ」
自分の体から、そんな言葉を聞いたのは初めてでした。
とはいえ、空腹感は完全になくなってるワケで、口にした瞬間の全身が痙攣するかのようなショック現象も相まって、「これ…仙豆じゃね?」と完全に間違えたリアクションをした挙句、それからしばらくの間は、会う友達友達に「ティッシュって仙豆なんだぜ」と教えてあげて回っておりました。友人たちの「意味が全くわからない」という表情を今でもまざまざと思い出します。
あっ、すみません。味をお伝えしてなかったですね…。食レポなのに。うっかり。
はい、ティッシュしゃぶしゃぶのお味のほうは…
一言で言うなら「しょうゆ味」。
それ以上でもそれ以下でもありません。なにぶん食材自体に味も香りもないので、醤油本来の塩気と香りを存分に堪能することができました。
このような経験をさせていただいたお陰で…と言うべきか、以降、僕の好き嫌いはほとんどなくなり、なんでも美味しくいただけるようになりました。そりゃそうですよね。おそらくティッシュより不味いモノなんてこの世にはないもの。
そんな味覚バカがお届けしていくこのグルメコラム。
よろしければ次回以降も、ヒマすぎてヒマすぎてもう何もやることがないってタイミングで、読んでいただければ幸いでございます。
<本日のお料理と評価>
ティッシュしゃぶしゃぶ……★☆☆☆☆(★1つ)
<総評>
できれば口にせずに済む人生を頑張って歩みましょう
文:嵐
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