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超高級☆缶詰を喰らって人として成長する【グルメハンター嵐004回】

皆さまこんにちは。グルメハンター(自称)の嵐です。

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突然ですが、皆さまは「缶詰」がお好きですか?

 
僕は昔っから缶詰が大好きでして。

幼年のころ、お母さんがよく蜜柑の缶詰を使った寒天ゼリーを作ってくれたました。もちろん寒天ゼリーも美味しかったんですけど、缶詰に残ったシロップをもらって飲むのがもう楽しみで楽しみで。さわやかな蜜柑の香りと、まろやかでとろけるようなシロップの甘味…。思い出すだけで口中に洪水が巻き起こると共に、郷愁の念が強まるというものです。

さて、そんな三つ子の魂はもちろん百まで健在でして、いまも缶詰は僕にとって大好物のご馳走。

果物系の缶詰こそ食べなくなりましたが、ツナ缶、サバ缶、おつまみ缶。ご飯やお酒の良きお供として、いまでも週イチくらいのペースで、何かしらの缶詰を口に運んでは楽しんでおります。そこで今回は、僕にとってのご馳走である缶詰……のなかでも、真のご馳走になりうる缶詰、つまり高級缶詰をハントしてみようかなと思い至りまして。

ただですね、そのアイディアを思いついたと同時に非常に大事な事実も思い出しました。

この企画、完全自腹なんですよね。

高級缶詰なるものを食したいのなら身銭を切らねばなりません。グルメハンターを名乗る以上、当たり前っちゃあ当たり前ですが……その…ホラ、このコラムの原稿料ときたら……ね。察してください。

さて、そこらへんの気分が落ち込んじゃう事実は一旦忘れまして、行って参りましたよ、デパ地下に。もちろん狙うは高級缶詰ですから、ただのデパ地下ではありません。かの有名な高級デパート、『イセのタン』の地下にある食品売り場コーナーでございます。

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いや~、ぶっちゃけ場違い感が凄いですな(苦笑)。

さすがは老舗で名うての高級デパートなだけあって、そのデパ地下を物色しているのは、ハイソな香りが匂い立つようなお金持ちそうな方たちばかり。

この写真を撮った時も、
「あらやだ、オノボリさんかしら」
「いいお歳をして舞い上がっちゃって。フフ、可愛いねぇ」

という、その場に居合わせたミセス・ミドルたちの心の声が拡声器を通して聞こえてくるようでした(被害妄想)。

―――目的を完遂して早く帰りたい。

羞恥心から、缶詰があったら入りたいような心情に襲われた僕は、何食わぬ顔でのんびりとスマホのカメラのシャッターを切っていた担当編集を促して、そそくさと高級食品のコーナーへ。

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ひゅっ(息を吸う音)

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ほぉっ(息が漏れる音)

いや~目ん玉、飛び出ますね。ある程度の予想はしておりましたが、やっぱり高い。あらゆるモノがセレブレティ。僕は瓶詰も大好きで、いまでも鮭フレークなめ茸食べるラー油なんかを好んで購入しては仲良くしてもらってるんですけど、このお店におわしますのはバリバリにイケてるグループの方々。僕が普段から仲良くしてるお友達とは完全にレべチってヤツです。ナガサワ君とハナワ君くらい違います

まぁでも今日のお目当ては缶詰ですから。瓶詰じゃないですから。そもそも瓶詰の瓶がホラ、高価なのかもしれないですし。瓶ってガラスじゃないですか。きっとそれで高いんですよ。そうであってほしい。

店内をグルグルと回遊しましたが、お目当ての高級缶詰は、一向にその姿を現さない。

もしかして、今回は僕の見当違いなんじゃないか?

そもそも高級な缶詰なんて存在しないんじゃないか?

古来より我々の胃袋を支えてきた保存食は、今もなお庶民の味方なんじゃないか?

参ったなあ。このままじゃ完全に企画倒れだよ(安堵)

しょうがない。ここはいったん出直して別の企画を考えよう。ホッと胸を撫でおろして、早歩きで、薄目になり、一目散に出口へ向かおうとする僕。これ以上、ここの高級オーラに晒されると僕の身体が持ちませんから。完全にハナワ君の迫力に飲まれてましたから。

その時、担当編集に腕を掴まれました。振り向くとニヤニヤしています。背筋がぞっとしました。担当編集は邪悪な微笑みを浮かべて  遠くに見えるコーナーの一角を指差しました。

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あっ…缶詰ぢゃん…。

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たたたたったた。たっかぁ…。

……缶詰コーナーにもいるじゃないの、ハナワ君。

ヘイ、ベイビイ。
キミを…

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お買い上げさあああああああああ。

…あるところにはあるものなんですね。やっぱりカニってお高いんですね。
10000円ですよ? いちまんえん。

ぶっちゃけ、今日僕が来ている服よりお高いんですけど。

〇ジャンパー…2980円
〇パーカー…3980円
〇ズボン…2980円
■計:9940円

41歳にもなって、カニ缶に負けるコーディネートをしているのもどうかと思うんですけど、決して僕が悪いワケではないと思います。別にカニ缶も悪くないけど。ちなみに白状しますと、今回購入したのは10800円のほうではなくて7020円のほうなんで、実は僕のコーディネートは負けてないんです。ただ、その金額の差は単純に量の差だと(なかば強引に)推察したので、7020円ガニを手に取ったのです。

「せっかくだから1番高いのを買えば?」

担当編集にはそう言われましたが、さすがに1万円でお釣りが来ないことには心と財布が激しい拒絶反応を示してしまいまして。ほら、「ワンコイン」って概念、あるじゃないですか? それと同じで、なるべく「ワン諭吉」で済ませたかったんですよね。…自分でも何を言っているのか分からないのですが(苦笑)、とにかくコレが庶民の限界でした。だって、よくよく考えたら消費税で1080円も取られるんですよ? タバコが2箱も買えるっつーの。

ブツブツと言いながら、7020円の缶詰を上着のポケットにねじ込み、高級カニ缶を食べるのに到底相応しくない場所こと編集部へと移動します。

無言で歩いていると、いよいよ大それた買い物をしちゃったなあ…という考えが沸々と湧いてきました。ほどなくして編集部に到着し、いざ実食……といきたいところですが、なかなか食べようって気が起きてきません。とりあえず、折角だから色々と思い出を残しておこうと思って、まずは記念撮影をしてみました。

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見つめ合う僕たち。

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「ズッ友」みたいな感じで。(後で食うんだけど)

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おおカニ缶…キミはどうしてカニ缶なの?

……写真を撮ってる担当編集が舌打ちを高速連打してるので、記念撮影はこのへんにしておきます。

いよいよ開封。

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まずビックリしたのは、缶詰の中身が薄紙で包まれていたこと。こんなん初めて見ました。さすがは7000円。手が込んでやがる。

と、思ったのですが、ちょっと調べてみたところ、カニ缶には白い紙が入っているものらしいですね。この紙は「パーチメント紙」と呼ばれ、「ストラバイト現象」を防ぐためにあるんですって。一気にハードSF小説みたいな雰囲気になりましたが、要はカニに含まれている成分と缶の金属が化学現象を起こすのを防ぐための処理とのこと。

というワケで7000円のカニ缶だから紙があるワケじゃないと。期せずして、高級カニ缶どころか普通のカニ缶すら食べたことがないという事実が露呈してしまいました。

そんなこたぁさておき、次に驚いたこと、それは缶詰を開けた瞬間にふわ~っと部屋いっぱいに磯の香りが立ち込めたことです。さすがは7000円。まるで海を切り取ってそのままこの一角に持ってきたようだわ。

そして薄紙を慎重にお箸でめくりあげると、中にはギッシリとカニの身が詰まっている。そしてその身の1つ1つが、重量感たっぷり。

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そりゃそうだよね。これ、一切れで1500円くらいはするんだもんね。ではいよいよ………いただきます!!!!!

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南無…パクリ…モグモグ………

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カッ!

すげええええええええええええ!!!!!!

なにこれ! 本当に缶詰なのかっ⁉️

とにかくカニ! まごうことなきカニ! とどのつまりはカニっ………!

そしてその食感は、ただボイルをしたり焼いたりするだけでは実現不可能であろう「凝縮」の一言。ともすれば硬さを感じるきらいもあるが、あえて上等なカニの身を缶詰にしたことで、その身がギュッと極限にまで締まっておる。アラスカの海底をしたたかに生き抜いてきたカニの、溢れんばかりの生命力を宿した力強い歯ごたえこれはまさに…海のダイアモンドや~!

さすがはお値段7000円。
やっぱりすごいわ7000円。
この「圧倒的カニ感」を味わえただけで、このカニ缶、7000円を払う価値のある感。
価値観を変えるカニ缶。
さもありなん。

ふぅ。感動しすぎて思わず韻を踏んじまったぜ(全然踏めていない)。

いや~、今回は良い買い物をしましたね。人間として、一気にレベルアップした気がします。

「借金してでも美味いものを食え」

そんな格言を耳にしたことがありましたが、なるほど、こういうことだったのですね。食の経験値は人を大きく成長させる。その真理に、1つの境地に、齢41にしてようやく到達できましたわ。

「食感は分かったけど、味は?」

担当編集がボソリと言いました。

はぁ、やだやだ。

食を、『味』という一面のみでしか語る術を持たないヤツはこれだから。
見た目の美しさ。
香りのかぐわしさ。
そして今回、特筆すべきだった食感のたくましさ。
料理を多角的に愛でることができない担当編集の浅はかさには、思わず同情の涙を禁じ得ませんね。もっとも、ついさっきまでは僕もそちら側にいたわけですけども。

僕を成長させてくれてありがとう、カニ缶。
ありがとう、7000円。

「いや、だから味のレポをはよ」

……う
ううう…
うるせえええええええええええええ!
うっせえうっせえうっせえよ!!!!!!
この際、味なんてどうでもいいんだよっ!
7000円! なーなーせーんーえんっ!! とにかくこのカニ缶は7000円なんだっ!
美味くないワケないじゃない!! 海をそのまま閉じ込めたような、磯の香りと自然な塩味がこのカニ缶の持ち味なんだ! きっとそうだ!
そうに決まってるんだあああああああああああああああああああああああ!!!!!!




「なるほど。味自体はそうでもなかったってことね」

担当編集の僕を見る目は、哀れみで満ちておりました。


………僕は想像してみました。
どんな人がこのカニ缶を日常的に購入するんだろう? と。

すると脳裏に浮かんできたのは、こんな光景。

ホームパーティがライフワークの、高級マンションに住む上品なマダム。
今日もテニス仲間を招待して、自慢の手料理を振る舞います。テーブルの上には、ところ狭しと美味しそうな料理がオードブル形式で並んでいる。そしてそのなかでもひときわ目を惹くのが、ゴロゴロと太いカニの身がふんだんに散りばめられた、ボリューミィなカニサラダ。

「え~、奥様すご~い! このカニサラダ、本物のカニの身を使っているじゃない? ウチなんてカニカマよぉ~(笑)」

「カニの身と言っても缶詰だから。大したモノじゃないのよ。本当は自分でボイルしたものを使いたかったんだけど、テニス帰りでお時間もなかったから…。手抜きでゴメンね(テヘペロ☆)」

僕がもったいなくて100回以上は咀嚼しなければ飲み下せなかったカニ缶を、そこにいるマダムは余裕しゃくしゃくで「大したモノじゃない」「手抜き」だと敢然と言い放ちました。

それはまさに、お金持ちの道楽が成せる御業。
ましてやこのカニ缶にドレッシングをかけて食べるなんて、庶民の僕からしてみたら、上等な料理にハチミツをブチまけるがごとき思想。
所詮は住む世界が違いすぎる。
そういうことなんでしょうな。


同じ道楽なら…同じ7000円を支払うなら…

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僕はコッチの道楽のほうが、100倍いいや。



<本日のお料理と評価>
超高級カニ缶……?????(計測不能)
<総評>
身の丈に合わないモノにお金を使うと被害妄想が暴走する


文:嵐(ツイッター→@anotherarashi

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おまけ(担当編集による追記)

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味の比較のためにカニカマも買って食べさせたところ……。

……。

…………。

……………………。


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この顔である。


彼がグルメハンターを名乗るに相応しい舌を持っているかどうかは、今後の研究が待たれる。


サポートして頂ければアジトの活動がより活発になること請け合いであります。もっと面白く、もっと高みへ…!!