う〇こがもれそうな時に脳内で流すべきBGMについて
ピンチ、それは「うんこがもれそう」な時。
ピンチは世の中に山ほど転がってますが、なかでも我々に日常的に付きまとってくるタイプのピンチってあるじゃないですか。そう、よく陥るヤツの代表格にして凶悪度MAXなヤツ、すなわち「うんこ漏れそう」とか。よくよく考えるとコイツは本当にタチが悪くて、凶兆を感じたら最後、耐え難い苦難を波状的に与えてくるうえに、たとえ苦難から解放されたとしても場所やタイミングによっては社会的なデスで人間にとどめを刺しにきやがる――ときたもんです。だから今回は「うんこもれそう」を軸にピンチとどう戦うか、について考察していきます。
「うんこが漏れそう?そんなの危機的状況じゃないよ」って人、います? いないよね? いたらソイツは人としてピンチです。すぐ縁を切ってください。
トイレが空いていない。
自分の腸の調子と家までの距離の計算をミスった。
昨日辛いものを食べた。
うんこのやり方を忘れた。
これらのピンチの際、我々はどうすべきか?
答えは簡単。そう。
音楽です。
音楽の力の偉大さは言うまでもない。
うんこが漏れそうな時に一番欲しいモノ、それは時間的猶予とトイレに他ならないワケですが、それらがまだ手に入らない時ですら、音楽だけは鳴り響かせることができる。キミの脳内でね。
そんなワケで超危機的状況、いや、腸危機的状況を――
脱するための、
克服するための、
楽しむため(上級者限定)の……
「うんこがもれそうな時に脳内で流すべきBGM」を紹介していこうと思います。
1曲目
Stairway to Heaven/Led Zeppelin
ハードロック界の大御所レッドツェッペリンの名曲。日本での曲名は「天国への階段」。
タイトルからしてまさにぴったりな曲ではなかろうか? ヤツが漏れそうな時、そう、それは地獄。我らは天国(トイレ)への階段を昇らねばならないのだ。
イントロの美しいギターのアルペジオ(弦を一本ずつ鳴らすこと)は、逸る気持ちを抑えてくれる。さすが天才ジミー・ペイジ。うんこさえも抑えてくれる天才ギタリスト。楽曲開始から約1分経つとロバート・プラントの太い声が「大丈夫だよ」と自分に囁く。約2分経つと少し楽曲はアップテンポに。まさに漏れそうな自分のテンポ感と楽曲のテンポ感がリンクしていく。約4分経つとドラムのジョン・ボーナムが参加。パワフルな彼のドラミングも、この曲では抑えられがち。いつものパワフルなドラムのビートなら、もううんこは漏れている。
これ以降は楽曲も盛り上がりっぱなし。いい加減に天国への階段を上りきらないとやばいぞ、と警笛を鳴らしてくれているのだ。ちなみこの楽曲は約8分。フルで流した頃にはうんこも水に流れているだろう。楽曲終了時にまだ天国(トイレ)に到達できていない場合はおそらく手遅れかと思われる。
ちなみにこの楽曲の冒頭の歌詞だが
【There’s a lady who's sure all that glitters is gold
And she's buying a stairway to heaven.】
ある美しい淑女はきらめくものすべてが黄金だと信じていた
天国への階段は彼女のためにあった
きらめくものすべてが黄金…黄金とは一部界隈におけるヤツの隠語であることは周知の事実だ。うん、何もかも示唆的だ。
2曲目
The Final Countdown/Europe
もしも僕が映画を撮ったとして、主人公のうんこが漏れそうなシーンがあるなら迷わずこの楽曲をBGMにしようと思う。何といっても曲名がファイナルカウントダウンですよ? 最後のカウントダウンってもうそれ、アレじゃん。漏れそうな人の心境でしかないじゃん。
「ロック史上最も有名なイントロ」なんて言われるほどに耳に残る旋律。壮大な物語の始まりを想起させつつ、何かに挑戦する人を鼓舞するような力がありますよね。人が戦いに赴く前…その戦いが熾烈であればあるほど、悲壮なまでの決意が求められる――うんこが漏れそう――負けるかもしれないが戦わねばならない時だ…――完璧です。あまりの楽曲のハマりっぷりにトイレへと急行してる間にも笑みがもれそうです。あ、笑みはもれてもOKです。
ハードロック特有のこの勇ましいビート、ハイトーンな歌声。うんこが漏れそうなだけなのに、何かの物語の主役になった気持ちになれて実にオススメ。是非、脳内に響かせてください。
ちなみに、歌詞は宇宙に旅立つ内容になってます。歌詞も楽曲も絶妙にダサいのが個人的には大好きですが、その一部を紹介しましょう。
【It's the final countdown The final countdown
Ohh We're heading for Venus and still we stand tall】
さぁ最後のカウントダウンだ。最後のカウントダウン。
オォ、俺たちは金星に進む、俺たちは毅然と立っている
また金が出てきたし…。
3曲目
春よ、来い/松任谷由実
これが流れればどんな場面も名シーンになる。この「春よ、来い」もそういった名曲のひとつですね。曲調もさることながら、タイトルと詩が本当に秀逸で、日本語の柔らかい響きや、控えめだが鮮烈な情景描写、そして聴き手に解釈を存分に委ねる比喩表現の数々。
淡き光立つ 俄(にわか)雨
いとし面影の沈丁花(じんちょうげ)
溢るる涙の蕾から
ひとつひとつ 香り始める
ヤツを我慢している自分の額に煌めく俄雨のような脂汗。
沈丁花のいとしい面影とは、今まで何度もお世話になったトイレの芳香剤に他なりません。溢るる涙は文字通り“我慢の限界”からくる涙でもあり、肛門から溢れそうなヤツのことも意味しています。
ひとつひとつ香り始める………なんだかお尻からうんこの香りがしてきた気もする、と捉えるべきでしょう。
どうですか、Aメロから全開でしょう。そしてサビ。
春よ 遠き春よ
瞼 閉じればそこに
愛をくれし君の
なつかしき声がする
きっとこの我慢から解き放たれば私にとっての春が来るわ。春よ、遠き春よ。便座に座って目を閉じれば、懐かしき水の流るる音がする――
ユーミンの華麗なメロディがピンチをドラマチックに引き立ててくれるオススメの一品です。ただし、曲調ゆえに動きがややスローモーションになってしまうという致命的欠点があるので、脳内で流す際はその点に注意してください。
4曲目
クロノスタシス/きのこ帝国
うんこが漏れそうなシチュエーションは多岐に渡り、その種類の多さは軽く2億を超えますが、この曲は「夜の駅から家までの帰り道」においてうんこが漏れそうな時にぴったりな曲です。そもそもの歌詞の内容は、恋人と夜の散歩をしてるから時間が止まればいいのにね〜って内容。
「それのどこがピンチの状況に合うんだよ⁉」とお怒りの方、大丈夫です。わたしから提案がありますから。どうです、いっちょ、「うんこのことを恋人」だと思ってみませんか。さすればですね、うんこが漏れそうな帰り道が恋人と歩く帰り道に変貌しちゃうのです。
漏れそうな時、人は早歩きになるのか、それとも刺激を与えないためにゆっくり歩くのか。これは人類最大のテーマであり今なお盛んに議論されていますが、ここでクロノスタシスの歌詞を見てみると、
【歩く速度が違うからBPM83に合わせて】
こんな一節があります。BPMってのはテンポのことですね。漏れそうな時はいつもと歩くペースが変わる、今日はゆっくり目のBPM83に合わせようじゃないか、我が恋人よ。
この楽曲自体のBPMも83とオシャレな感じになっているので、この曲のテンポに合わせて歩くことでより世界観に浸れるし、普段は奔放かつ怒りっぽい腸内にいるカノジョ(もしくはカレ)も、この曲を聞きながらにして牙をむいてくることはないでしょう。
ちなみにBPM83は結構ゆっくりめなので、駅から家まで遠い方や本当にガチでやばい時は途中で漏れちゃいます(断言)。
【クロノスタシスって知ってる? 知らないときみが言う。
時計の針が止まって見える現象のことだよ】
この部分は漏れた時にピッタリな歌詞だね。本当に時計の針が止まればいいのにと思う。
5曲目
4分33秒/ジョン・ケージ
稀代の現代音楽家ジョン・ケージの最も有名な曲ですね。
4分33秒という演奏時間の間、演奏者は音を出さない。ただその時間が過ぎ去るだけ。無音の音楽、それがこの曲だ。
僕は普段から音楽を聴きながら移動するんですが、うんこが漏れそうな時はすぐに音楽を止めます。
これは音楽を止めたのではなく4分33秒を脳内で演奏しているということ。
4分33秒とはただの無音ではなく、演奏者が意図しない音を奏でる楽曲。沈黙と無音は別物。楽音と非楽音は異なる。
自分の動悸、息遣い、心音、電車の揺れ、商店街をいく人々の足音、おなら、足音、ドアを開ける音。
生活音すべてが4分33秒という楽曲に網羅されていく。うんこが漏れそうな時に流すべき曲としてふさわしすぎる。あと個人的には4分33秒もうんこを我慢できないからこれが自分にとってのタイムリミットという側面もある。
4分33秒以内にトイレに辿り着き、本懐を成し遂げたならば、「大」のレバーをひねる音、流れゆく水の音に耳をすませればよい。それらもまたジョン・ケージの4分33秒なのだから――。
いかがだったでしょうか?ピンチはいつ訪れるかわかりませんので、この5曲をいつでも脳内に流せるよう、普段から聞きこんでおくことを推奨します。
なお、いささか蛇足な感は否めませんが、「漏れちゃった」時にどうするのか……という問題からも我々は逃れられません。
そんな時は【時代/中島みゆき】を挙げておきましょう。
今はこんなに悲しくて 涙もかれ果てて
もう二度と笑顔にはなれそうもないけど
そんな時代もあったねといつか話せる日が来るわ
慰めっぷりがすごいので。
文:ウィー
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