大阪ストラグル 第3部 002話
001話は…コチラ
俺は少しだけ早足になり、ホームを歩く人を避けながら目的の男に近づいていった。近づくにつれ、男の身長は俺より少しだけ小さく、ツンツンに立てて伸びかけの髪が茶色く染まっていることがわかった。
「おい!!」
声をかけると男の肩がビクッと震えた。ゆっくりと俺の方へ振り返る。
「ほら、やっぱりそうや、お前カッキンやろ!」
「そ、そうやけど…」
カッキンは俺の姿を上から下までサッと確認した。少しだけビビってるような目をしていた。俺もカッキンの顔や格好をざっと観察した。さっき坂井が『スポーツマンが今日から不良になりました、みたいなヤツやな』と表現していたが、まさにそんな感じだった。
短ランとボンタン、茶髪のツンツン頭――なのだが、眉が太くてゴツゴツっとしたジャガイモのような顔に全く似合っていなかった。治りかけのニキビとやや色黒の肌があいまって、『スポーツ好きの中学生がイキっております』といった解説文がついていそうだった。
「…タケシ君?」
ようやくカッキンも俺を思い出したようだ。
「タケシ君かっ!!」
目を見開き、嬉しそうな表情が顔いっぱいにひろがった。
「そうや!! カッキン、久しぶりやなー!!」
その時、後ろから来た坂井が俺の肩に手をかけた。
「おぉ坂井、俺の小学校の時の1つ下で、カッキンて言うねん。一緒の少年野球のチームに入ってたんや」
俺がそう言うと、カッキンは坂井に対して頭を下げて挨拶した。その態度と声はもろに体育会系だ。
「木村と言います。こんにちは」
「そうか、こんにちは。いやでも、タケシが野球やってたって? ……それは嘘やろ。信じられへん」
「なんでやねん!! 信じられへんとまで言う根拠は何や」
「だって…なぁ?」
坂井はカッキンに向かって同意を求めた。
その言葉を聞いたカッキンは、坂井と一緒に俺を上から下までじっくりと見た。そして2人は同時に噴き出した。
(第3話に続く)
文:射駒タケシ
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