深夜2時のマクドナルドの詩 2024年2月【3】
朝起きて夜眠る。そういう生活を続けられない。たとえば朝7時に起きたとする。その日は夜12時に眠ることができる。でも次の日に7時に起きることができない。目覚めたら10時だったりする。
そんなの日の夜は、午前3時まで眠れない。そして起きるのが昼になる。昼に起きたら寝るのは朝。こうして毎日、寝起きの時間が後ろにずれていく。20日ぐらいで一周する。月の満ち欠けよりは少し早い。
夜型の期間はあまり外出しない。電車は止まっているし、図書館もお店も閉まっているから。そんな中、開いているのがマクドナルドだ。
***
深夜2時のマクドナルド。カウンターでSサイズのアイスティーを注文する。店員のお姉さんは30代ぐらい。高くて明るい声を出すが、やたらに早口で、言動の節々から苛立ちが伝わってくる。私の言葉を聞き終える前に、声をかぶせてくる。
私「店内で食べ」
店員「かしこまりましたー」
私「アイスティーのSをお願いし」
店員「レモンとミルクどちらになさいますか」
こんな感じ。私以外に客はいないので、急いでいるわけでもなさそう。きっと何かトラブルを抱えていて、他人を攻撃したい気持ちなのだろう。笑顔で朗らかなのがかえって怖い。
私が話している途中で声をかぶせてくるせいで、一部聞き取れなかった。聞き返したところ「お呼びしますのでしばらくお待ちください」ということだった。
蓋付きのカップの上に、レモンとシロップとストローを載せて渡された。いつも思うのだが、持ちにくい。たとえドリンクだけであっても、トレーに置いてほしい。
困ったことに、デフォルトでは手渡しということになっている。仕方がないので、毎回こちらから「トレーをお願いします」と頼む。
お姉さんはまたしても最後まで聞かずに背を向けた。そしてトレーを力任せに引き出し、怒ったようにチラシを敷く。あまりにも手際が良すぎて怖い。重い荷物を受け取った気がした。
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2階に上がると、そこそこ人がいる。みんな席をひとつかふたつ、あけて座っている。背もたれのある席は、右端と左端が埋まっている。私はその中間に座った。
かすかに公衆トイレのような臭いが漂ってくる。右端の男性からだ。70代ぐらいに見える。よく見ると薄汚れている。浮浪者だろうか。
左端は女性。50代ぐらいか。バッグとコートを脇に置き、3人分ぐらいのスペースを占有している。
左ななめ向かいにはブルージーンズの男性。50代ぐらい。小柄だが目つきが鋭い。スマホも見ず、本も読まず、腕組みして壁の高いところをにらんでいる。
右ななめ向かいは、夫婦らしき二人組。こちらも50代ぐらい。奥の女性は頬杖をついて、ウンザリした様子でスマホを眺めている。手前の男性はうたた寝している。
中高年が集っている。ファーストフード(ファストフード)と言えば若者のイメージがあるが、それは昔の話なのかもしれない。
若者は貧しく、中高年はお金を持っているというイメージもあるが、ここにいる彼らはお金持ちではなさそうだ。どんよりとした空気が漂っている。
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トイレから腰パンの青年が出てきた。見たことのある顔だ。ドリンクを注文している時に見た。店に飛び込んできて「トイレを貸してください」と頼んでいた。
私はその時、恐れを感じた。彼が酔っている様子だったからだ。酔っ払いは何をするかわからないから怖い。突然吐いたり、叫んだり、暴力を振ったりすることがある。
何事もなくトイレから出てきた男を見て、ホッとした。私は世の中から酒がなくなってほしいと思っている。でもそれがうまくいかないことは、歴史が証明している。
店には1時間ちょっと滞在した。人の出入りはほとんどなかった。
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