見出し画像

悲しみの区役所待合室。

マイナンバーカードを受け取りに来ている。平日だし、もうほとんどの人が入手している様だし、今更受け取りに来る人なんてさほど居ないだろうと思っていたけれどそうでもなかった。

区役所の待合室はお尻に火がつかないとやらない子で溢れかえっている。あれほど前から作れ作れと言われて、コンビニで色々できるよとかポイントがもらえるよとか、え?まだもってないの的な煽りCMとか…散々お尻を叩かれてきたけれど『なんかめんどくせぇ』という理由で作っていなかったマイナンバーカード。ついに病院でマイナンバーカードを持っていないのか?と聞かれるようになり、今後はマイナンバーカードを持っていないと手数料が高くなると言われ、いよいよ持っていない方がめんどくさい事になるぞと、しぶしぶ手続きをした次第である。

やるべき事をやっていない状態だとなんだか落ち着かないものだ。しかし、やるべき事が多すぎるとどうでも良くなってくる。例えば車にガソリンを入れるとか、米を買うとか、洗濯をして干すとか、風呂を掃除するとか、食器を洗うとか…。やるべき事は次から次へと押し寄せてくるので、忙しい。そしてそのやるべき事には金がかかるので働くしかなく、行きたくもない仕事に行き金を稼ぐ。人生とは一体なんなのかとか哲学的な事を考えながら通勤し、職場ではまた今日中にやる事、今週中にやること、今月、今期…と途方もなくタスクがあり、ふと『会社に隕石が落ちて潰れてしまえばいいのに』と破滅的な気持ちになったりする。

生活単位ではなく、人生単位でもやるべき事はかなりある。わたしの場合『妊娠・出産・子育て』というタスクが人生のやる事リストに残っており、ここ数年ずっと落ち着かない。

その前は『結婚』だった。恋をしたり彼氏を作ったり別れたり結婚というタスクを消すのもけっこう大変だったのに、結婚したらしたで今度は結婚式は?家は?子どもは?妊活は?老後は?と、驚くほどやる事リストは増え続ける。そんな中でマイナンバーカードを作るなんて優先順位が相当低い訳だが、がんばって時間を作り受け取りにくるところまで来たので、もう表彰してもらいたいくらいである。

わたしには、多分もう子どもは出来ない。


年齢的に言って治療をしても出来るかできないかといったところだ。病院に行って検査したりタイミングを見てもらったりもした。基礎体温をつけたり排卵チェッカーを使ったりもした。数年こんな事をしていてできなかったので、もう頭では分かっているし諦めているのだか『もしかして今回は出来てるかも』と毎月期待をしている自分もいる。今月で妊活は終わりにしようと何となく考えていたけれど今日生理が来て淡い期待がパチンと音を立てて消えた。


やっぱりね、分かってたけどね。旦那をお父さんにしてあげたかったな。母をおばあちゃんにしてあげたかったな。みんなの人生を幸せにしたかったな。子どもできなくてごめんね。惨めで、途方もなく悲しい。こんな気持ちをひと月に一度、もう何年も繰り返している。男はいいよなぁと思う。立場は同じはずなに共有出来ない事が山ほどある。



待合室には子連れのママがたくさんいる。子どもたちがギャーギャー叫び、イライラしたお母さん達の顔。あなた方がクリアした人生のタスクを私は消せませんでした。いいですね、やるべき事がやれて。と冷めた気持ちになってくる。同時に、育児に追われてイライラしている彼女達を見ているとわたしは本当に子供を産みたいの?お母さんになりたいの?という疑問も芽生える。出産や子育てをやるべき事だと思い込んでいるのはなぜなんだろう。申請して順番を待っているだけの人生だったらラクなのにな。



いいなと思ったら応援しよう!