もや3.「業績の悪い時って隣の芝生が照明に照らされている人工芝の様に眩しいんだよね」
「業績」という言葉は、この物語から消し去られた。
数字やグラフといった、きわめて実体のない、
しかし僕を翻弄する存在。
それはまるで、夜の帳に紛れて現れる、形のない影のようだった。
以前、業績が好調だった頃は、
僕は自分の世界に閉じこもり、外界に対してほとんど関心を抱かなかった。
それはまるで、深い井戸の中に一人きり閉じ込められたカエルのようなもので、自分の小さな世界で満足していた。
しかし、業績が傾き始めると、
その井戸の底から這い上がり、外界を見渡すようになった。
夜の街を歩きながら、ネオンサインが煌めくビル群を眺める。
あのビルの中には、一体どんなドラマが繰り広げられているのだろう?
捌ききれない仕事と懸命に格闘する人々、
あるいは、悩みを抱えた経営者だろうか。
そんなことを考えながら、僕はふと、
ある会社のウェブサイトを開いてしまった。
まるで、誰かの生活をのぞき見しているような、
後ろめたい気持ちを抱きながらも、ついついページをスクロールしてしまう。
そして、彼らの成功記事を読むたびに、
自分の心の奥底から嫉妬が湧き上がってくる。
それは、まるで、誰かに大切なものを奪われたような、
やるせない感情だった。
彼らの笑顔、自信に満ちた言葉、
それらは、僕の心の傷口に塩を塗るように痛かった。
いったいなぜ、僕はこんなにも他人を羨んでしまうのだろう?
それは、自分の無力さ、そして将来への不安の表れなのかもしれない。
あるいは、もっと根深い、人間の心の闇のようなものなのかもしれない。
僕は、まるで迷路の中に迷い込んだように、
出口の見えない状態に陥っていた。
心の奥底から、神様のような存在にすがりたくなった。
マザーテレサのような、慈悲深い心を与えてほしいと願った。
しかし、そんな願いは、どこかに消え去ってしまう。
夜空を見上げると、無数の星が輝いていた。
それらの星は、それぞれ異なる物語を秘めているのだろう。
もしかしたら、僕と同じように悩み、
苦しんでいる星もいるのかもしれない。
そんなことを考えながら、僕はベッドに横になった。
そして、ゆっくりと目を閉じると、
再び、あの深い井戸の中に落ちていくような感覚に襲われた。