留学はもちろん、海外に住んだことのない私が英語を習得できた私の英語習得法07
第7章 英会話学校を効果的に利用する私なりの方法
※第0章~第6章を読まれていない方は、先にそちらを読まれるように勧めます。
英語の習得過程のどこかで一度は、大部分の方が英会話学校や類似のウェブサービス等を利用されたことがあると思います。私もこれまで三か所の異なる英会話学校に行きました。現在の学校は、約25年間以上通っており、学校に行くことが私の生活上での重要なルーチンになっています。多分、よぼよぼになって他の人に迷惑をかけ始めるようになったら退学することになると思いますが、それまではずっと行き続ける気持ちでいます。
ここではまず、英語を話すことが出来るようになった今でも、何故私が英会話学校に行き続けているのか、その理由を説明したいと思います。そして、この長い経験の中で英会話学校を賢く活用する方法について、自分なりに工夫して気づいたことを紹介したいと思います。
おそらく多くの方にとっては、英会話学校に行く理由は私のとは異なっていると思います。また、通われている学校から勧められている勉強の仕方も聞かれていると思います。他の章でも書いているように、そういったやり方を否定して、私のやり方を押し付けようとするつもりは全くありません。ただ時には、自分とは違う考えに耳を傾けてみると、何か役に立つことを見つける可能性があるのではないかと思います。そのような気持ちでお読みいただけるとありがたいと思います。
・何故英会話学校に行き続けるのか?
英語習得過程の初期での目的は、ほとんどの方と同じだと思います。英語をネイティブから直接学び、英会話が上手くなりたい、ということが目的でした。その場合は、英会話学校のカリキュラム通りに学んでいくことが活動の中心になります。教材も指定されたものを使って勉強してきました。それ以後は、英語のレベルが向上するにつれて勉強の仕方も少しずつ変わっていきました。ここではその後の経過を中心に、変化の様子を私の経験を基に説明します。
今通っている学校で、英語のレベルが中級から上級、そしてさらにはNN(第0章参照)に上がっていきました。それにつれて、勉強の仕方も段々と変わっていきました。使われる教材は、初期には定型的なテキストでしたが、それが使われなくなり、クラスを担当するネイティブの先生が準備してきた記事や短い資料等を材料に勉強することが増えていきました。その中でも最初の頃は、先生が準備してきた材料を理解し、その理解度を確認するための色々な問題を解くこと、が中心でした。しかし、レベルが上がるにつれて、社会的に関心が高まっている話題等をテーマにして、互いの意見を述べ合うことが増えていきました。そして今では、生徒が自分たちで話し合いたいトピックを持って行く6T(レベル6のトピッククラス)やSp(スピーキングクラス)に参加することが中心になり、通常のクラスには殆ど参加しなくなりました。但し、お断りしておきますが、通常のクラスには参加する意味がないということではありません。参加しなくなった理由は、読み進めていただければ理解していただけると思います。
ここで仮に、英会話学校をやめてしまうことを考えると、私の生活の中でネイティブとの間で英語の会話を楽しむ機会はぐっと減ると思います。私の周囲には英語のネイティブが何人もいますが、彼らに無理に英語で話してもらうように頼むことは適切ではないと思っています。彼らが英語で話したいと思っていれば当然英語で話しますが、私たちは今日本に住んでいるわけですから、もし、彼らが日本語で話したいと思えば、日本語で話すのが礼儀であると思っています。
彼らの生徒でもないのに、私の英語の教師のような役割を彼らに要求するのは、失礼なことのように思われます。もしも、私が彼らに英語の教師の役割をお願いするのであれば、その対価を支払うのが当然でしょう。このように考えれば、私が英会話学校に行き続けるのが、最も自然で、合理的でもあると思います。
それ以外にも学校に行き続ける理由があります。それを箇条書きにします。
(1)スポーツと同じで、重要な行動や実践を止めると、能力はすぐに落ちる。
大人になってから学んだ能力は、子供時代に成長過程で学んだ能力とは異なり、使用を止めるとその機能は落ちていくものと思っています。続ける必要があると思います。
(2)英語では限られた経験しかしていないので、経験の幅を広げたい。
英会話学校や実際に英語を使う場面は、私の生活のごく一部でしかありません。いろいろな場面での英語を学ぼうと思えば、続けることが第一です。
(3)目標とする英語のレベルには終わりがない。
普通の英会話にそれほど困らなくなっても、対応できない部分は残っています。その部分をできる限りゼロに近づけたい、というのが英会話を始めたときからの夢です。
(4)自分の仕事や研究(心理療法)にも直接的に役に立つ。
私はSolution-Focused Brief Therapy(解決志向ブリーフセラピー)という心理療法に強い関心を持っています。英語による表現方法を理解することが、この治療法の理解を確かなものにしてくれます。
(5)英語が使えると世界の情報を収集するのが非常にやり易い。
世界の情報発信で中心的に使われる言語は英語です。YouTubeで英語によるニュースを聞くことが出来れば、最先端の情報についていくことが出来ます。学校に通っていると、日本語の環境では出会わないような最先端の情報を知ることが頻繁にあります。
(6)純粋に、英語で会話しているときが楽しい。
自分が言いたいことを英語で言うことが出来るようになると、英語での会話が本当に楽しくなります。止める理由がみつかりません。
現在、学校ではトピック中心の会話を楽しんでいます。英語そのものの勉強をきちんとしようと思えば、インターネットで入手可能な様々な情報を使って勉強することが出来ます。教材を使って学んだり、質問を解いたりするクラスには殆ど参加していませんが、それらは、私にとってはどうしても英会話学校でなければできないものではなくなったからです。例えば、次のウェブサイトではレベルに合わせた英語の勉強ができます。
Breaking News English (https://breakingnewsenglish.com/)
ここには最新のニュースから作られた学習教材があり、レベルが7つに分けられていて、各々のレベルに応じた読み取りや聞き取り、そしてボキャブラリーの問題等が準備されています。全てを独りで学習できるようになっています。
このようなサイトを利用しなくても、New York TimesやThe Guardianの記事を自分でしっかり読んで勉強することもできます。また、YouTubeには独学用の多様な英語関連のチャンネルもあります。こういった勉強の仕方であれば、自分のペースで行うことが出来ます。色々な意味でこれらの勉強は、英会話学校でなければできない、というものではなくなりました。
・英会話学校でなければできないこととは何か?
それでは英会話学校でなければできないこととは何でしょうか。それは、一言でいえば、英語の環境での人生経験です。
人生経験というと大げさかもしれませんが、私たちは生きていく中で実に多くの経験をしています。もし、自分が帰国子女だったり、片親が英語を話す外国人だったりすれば、朝起きてから夜眠るまで、そして家庭での生活から社会での生活まで、さまざまな状態での英語を経験していると思います。
前述したように、途中から英語に触れ始めた私たちは、英語環境では非常に限られた人生経験しか持っていません。特に子供時代に経験するようなことは、今後も経験する機会はないでしょう。大人になってから経験する内容にしても、ネイティブに比べて何割の経験をすることができるか、見当もつきません。こういった経験を積み重ねていくには、とにかく英語を話す時間を増やすしかないと思っています。
例えばトピッククラスでやっていることを想像してみて下さい。ある意味で、ユニークな経験をすることが出来ます。トピックには現在の日本で話題になっていること等、いろいろなことが英語で話し合われます。そして参加者は年齢も性別もいろいろです。このような中で異なる人々の経験や意見を聞くことは、一種の人生経験に繋がります。しかも、興味深いことに、自分の日本語環境での経験を振り返ってみると、トピッククラスでの経験は日本語で話している環境ではめったに持てない経験のように思われます。
・自分が話したいことを話すことの重要性
このようなトピッククラスに積極的に参加するには、重要なポイントがあります。自分が本当に話したいことを話す、ということです。英会話を学ぶとき、特に初級~中級レベルの段階では、ミスをすることを避けようとしてあまり積極的に発言しない傾向があるのではないでしょうか。私も一時期そういう傾向がありました。それでも、次第にミスを恐れずに発言するようになっていきましたが、そうさせたものは何だったと思われるでしょうか。自分の意識づけや考え方も重要だとは思いますが、私の場合に最も重要だったのは、話し合われているトピックそのものでした。
本当に自分が話し合いたいと思っている話題が、目の前で話し合われているとしたら、ミスを犯すことを気にする心はどこかに飛んで行ってしまい、ブロークンでも話したいと思うのではないでしょうか。想像してみて下さい。もし、貴方が野球のソフトバンクホークスの大ファンだとして、今貴方の目の前で、外国人の友人たちがソフトバンクホークスの話を英語でしているとしたら、何としてでも英語で一言発言したくなるのではないでしょうか。
ミスを恐れる心に打ち勝つ有力な方法の一つは、“日本語で話しても非常に面白い話を英語でする”ことだと思います。
英会話学校を私が続けている動機の説明が長くなりすぎました。こここからは、現在英会話学校に行っている人に向けて、私が気づいて実践してきたことについて一つずつ説明します。
・英会話学校はアウトプットをするところである
学び始めの時期は、英会話学校で学ぶ内容が、英会話習得の行動の中の重要な部分を占めることになります。しかし、レベルが上がってくるにつれて、自分の時間で独りでもいろいろと英語を学ぶことが出来るようになります。そうなったときでも、未だに英会話学校で文法やボキャブラリーを学ぶというのは、時間がもったいないと思いませんか。文法やボキャブラリーの学習はどこでもできますが、ネイティブとの英語での会話は、英会話学校以外ではなかなか経験することが出来ません。つまり、ネイティブとの英語による実践的な会話こそが、英会話学校に行く目的として最も重要ではないでしょうか。
そして、ネイティブと会話をするということは、自分も何らかの発言をするということです。つまり、別の角度から見れば、英会話学校における最も重要なことは、自分で英語により発信する、つまりoutputすることだと思います。学校以外の時間を使って、いろいろな学習をして自分の中に蓄積してきたこと、つまりinputしてきたことを、英会話学校で実際に応用して発信するのが、最も効果的な英会話学校の活用法ではないかと思います。
・一生懸命やってした失敗は貴重である
積極的に英語で発信するようになると、必ず起こることがあります。それはミスをするということです。ミスにはいろいろなものがありますが、ここではその分析はやめておきます。ただ、しっかり準備をして臨んで犯すミスは、実は非常に貴重な体験なのです。学習においては、間違いを犯すというのはネガティブなことではないのです。
ミスを繰り返すうちに気づくようになりますが、ミスに関連した内容、例えばある英単語の意味や文法の間違い等は強く印象に残ります。ミスを犯したことが、より正確な英語表現を学ぶことに繋がります。英会話習得の行動をとっていない方々から、「英語で話すことが出来てうらやましいですね。きっとミスなどしないのでしょうね」と言われたことがありますが、その時には「ミスはしょっちゅうしています。むしろ、ミスをした分、英語が上達していると思います」と答えるようにしています。
少し内容がずれますが、ミスについて最近は面白い体験をしています。思いつくままに、成り行きに任せて、日本語からの訳ではなくダイレクトに英語で話していると、ときどき簡単な文法上のミスを自分が犯しているのに気づくことがあります。最近は、そういったミスの一部は、話した直後に自分で気づくようになりました。それと同時に、時々は他の生徒さんのミスにも気づくようになりました。
但し、他の生徒さんたちが犯したミスを私から指摘することはしません。指摘する必要があるとすれば、それをするのはネイティブの教師の役割だと思っているからです。実際のミスの具体例は、単数の主語に対する動詞のsを忘れた場合や、非可算名詞を可算名詞のように言ってしまった場合などです。振り返ってみると、このようなミスに気付けるときは、余裕を持って話ができているように思います。
・うまく話せなかったとき、その後で何をすべきだろうか?
ここで説明する内容は、前述の内容につながっています。ミスを犯したときには強い印象が残るため、その後で特に何もしなくても、記憶に残りやすくなります。しかし、その後にある行動をするともっとそのミスが役に立つようになります。
真面目な生徒さんは、学校で勉強した後、自宅などで内容の復習をされる方が多いようですが、そういう方には次のアドバイスは必要ないかもしれません。私のアドバイスは、それほど難しいことではありません。私がミスを犯したり、ミスとまでは言えなくても、思うように表現できなかったりしたときに、ちょっとした時間を使って、クラスの後で行っていることです。長時間かける必要はありません。
直前のクラスで思うようにいかなかった表現について、どのように言えばよかったかを英語で考えるのです。特に重要な一つの文章だけで構いません。沢山考えることができれば、それはそれで結構ですが、長続きしない可能性が大です。一文だけで、しかも短時間でよいですから、より適切な英文を考え出すようにすることを勧めます。そして大事なことは、この時は辞書やスマホ/PCの翻訳機能を使ったりして、できるだけ正確な文章を作り上げることです。そして、それをしっかりと記憶に残すことです。可能であれば、それをスマホ/PCのどこかに保存しておくともっと良いでしょう。こうすれば、次回に似たようなことを話す場合に、正しい英語表現が思い浮かぶ可能性が高くなります。
このような作業をしなかったら、将来また同じような間違いを犯す可能性が高くなると思います。このような作業は、前述した“ミスを活かす”ことの重要な一部だと思います。
・reactiveとproactiveの違いを意識する
今ではトピッククラスへの参加を長期間続けてきたことになりますが、その過程であることに気づきました。reactiveとproactiveの違いです。英会話学校における普通のクラスの中での会話は、参加している生徒から見るとreactiveなやり取りが中心になります。つまり、まずネイティブの教師から質問なり、コメントなりが発信されて、それに反応(reaction)して生徒側の発言が始まります。このような状況では多くの場合に、会話で使われる重要なキーワードや言葉はネイティブの発言の中に既に含まれている場合が多く、生徒はこの点をゼロから(from scratch)考える必要はありません。
しかし、生活の中での実際の会話は、reactiveな場面ばかりではありません。自分が最初に言い始める、つまり発信者になる場合も数多くあります。その場合は貴方が主導権をとって、proactiveな行動を起こす必要があります。私が参加しているトピッククラスではproactiveな役割を果たすという貴重な経験をさせてくれます。自分が話したいことを説明するのに役立つ適切なキーワードを考え、議論したいテーマや質問文などを自分で考える必要があります。
実生活で考えてみると、このような経験に慣れていなければ、会話ではいつも受け身ばかりということになりかねません。自分から話題を提供して大事なポイントを話し合う、という行動をしなければ、実生活では会話で主導権を握ることが苦手になるかもしれません。是非、proactiveな行動が求められる場面で、英語で発信する経験を積まれるように勧めます。
・分かり易く話すためのコツがある
前述のように自分から発信することを考えたとき、英語の能力以外にも重要な点が関係してきます。それは、如何に分かり易く話すか、ということです。
長く何かを話すということについて、おそらく一般の生徒さんは、日本語でしか長く話す経験をしたことがないのではないでしょうか。その影響かどうかの断定はできませんが、トピッククラスで生徒さんの話を聞いていると、日本語的な発信の仕方で英語を話そうとしているのではないか、と感じる時があります。日本語的な発信の仕方というのは、簡単に言えば、一番言いたいことを最後に持ってくる傾向です。英語でのディスカッションに慣れてくると、こういう話し方をされると分かり難いと感じることがよくあります。“何が言いたいか早く言って欲しい”という感じになって、少しイライラするときもあります。
英語の基本構造は、原則として、大事なことをできるだけ前に持ってくるようになっています。そして、細かな点はその後に続けて説明していくというパターンです。例えば、肯定/否定が英語では最初の方に来るのは、この原則に従っています。私の個人的な意見では、話そうとする内容の流れも、このパターンで構成すると、英語らしく響くように思います。
そこで、私が自分から発信する場合は、まず、一番言いたいことを端的に短い文章で、できるだけ最初に言うようにしています。その後で、重要なポイントを一つずつ説明していきます。私は過去に大学で研究をし、いろいろな機会に学会発表していた経験を持っていますので、このような発信の仕方が身についています。しかし、そういう経験のない方には、こういう組み立て方で話すことを求める、という私の意見は少し難しい要求になるかもしれません。
・英語での会話の仕方が日本語にspilloverする可能性がある
日本語で話しているときと、英語で話しているときは、行動パターンが違ってくるように思っています。英語で話す機会が増えてくると、この違いは特に顕著になっていくように思います。これについては、また別の機会に詳しく議論したいと思っていますが、一つだけそれに関連した経験を書こうと思います。
私自身が日本語で話すときは、最初から明確に自己主張するような話し方は、普通はしません。聴き手や周囲の人々の様子に注意しながら、少しずつ自分が言いたいことを表現するようにしています。
しかし、前述のようにトピッククラス等において英語で話すときは、最初から明確に何が言いたいかを言うようにしています。その影響と思われるのですが、最近は日本語の環境でも、何か意見を求められると英語的な発想で話そうとする傾向が出てきているように感じることがあります。言ってみれば、英語での話し方の態度が日本語の領域にあふれ出てきている(spillover)感じが時々しています。
英会話学校に行きながら考えてきたことの一部をまとめてみました。分かりにくいと感じられる部分もあると思いますが、お許しください。ここで述べたことは、以後の章でも時々出てくると思いますで、いずれは理解していただけるのではないかと思っています。