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アジャパー・ランチ Vol.1 開催レポート
「スキマ時間のアジャ活」で生の声に触れる!
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2023年1月15日、YouTube Liveにて「スキマ時間のアジャ活」イベント、アジャパー・ランチの第一回を開催!日々の業務の合間に、アジャイルの"今"を気軽に学び、実践者のリアルな経験や知見を得られる場として、このランチタイムイベントを企画しました。
記念すべき初代ゲストは、NTTドコモの生巣(なます)様。国内有数の大企業でアジャイル推進に挑戦する苦労、工夫、そしてやりがいを、「生の声」で熱く語っていただきました。当日は、視聴者の皆様からの質問やコメントがチャット欄に飛び交い、私たち主催チームにとっても、非常に刺激的で学び多い「アジャ活」となりました。
このレポートでは、生巣様とABI板倉による白熱した質疑応答の模様をお届けします。皆様の現場で活かせるヒント、新たな気づきがきっと見つかるはずです。
「スキマ時間のアジャ活」、ぜひ皆様も体感してみてください!
【2025.1.15生配信】アジャパー・ランチvol.1
株式会社NTTドコモ 生巣様
生巣様Q&A
Q1
パイロットプロジェクトにアジャイルコーチがついていますというお話がありましたけれども、実装できるようになったという判断をどうやってしてるんですか?その基準はなんですか?
「自走」の定義、気になりますよね?そこで、パイロットプロジェクトが独り立ちしたと言える基準を具体的に探ってみました。
A1: 生巣様の回答
「外部コーチのアセスメントも活用しますが、それだけではありません。スクラムイベントや、チームのSlackでのやり取りも見ています。例えば、スクラムマスターがちゃんとチームをリードできているか、開発者も自分たちで考えて動けているか。あとは、ちゃんと情報共有ができていて、コミュニケーションが活発かどうかも見ていますね。以前は難しかった、パートナー企業との直接のやり取りができるようになっているかも大事なポイントです。そういった、色々な観点から総合的に判断しています。大体、半年ぐらいで自走できるケースが多いですね。」
ここがポイント!
外部コーチのアセスメント
スクラムイベント、チームのSlackでのコミュニケーションの観察
以下のポイントを総合的に判断
スクラム理解と実践
リーダーシップと主体性
透明性と活発なコミュニケーション
パートナー企業との直接的なやり取り
自走までの期間は約半年
Q2:
開発者とスクラムマスターが社員ではなくパートナーだと、良くも悪くも社員の判断を求める関係性で、自己管理化に影響が出そうな気もしますが、その辺りパートナーと社員の壁はどう工夫しているでしょうか?
社外パートナーとの協働で生まれる「壁」。チームの自律性にどう影響するのか?、壁を取り払う工夫とは?実践例に迫りました。
A2: 生巣様の回答
「まず、大きな方針は最初に決めて、その範囲内でパートナーに判断を任せるようにしています。あとは、社員が雑談チャンネルで積極的にコミュニケーションを取って、心理的安全性を高めるようにしていますね。それから、ケースによってはパートナーにもアジャイル教育の機会を提供して、同じ目線で話せるようにしています。プレイブックも、全員が見えるところに置いて、情報をオープンにしています。そうやって、パートナーとの壁をなくして、フラットな関係を作るように心がけています。」
ここがポイント!
明確な方針設定
雑談チャンネルの活用
アジャイル教育の機会提供
プレイブックの共有
フラットな関係構築
Q3:
企業内とかそのパートナーさんとチーム社員メンバーというのがフラットな関係にあり続けられているということを、それはどのように図っていますか?
「フラットな関係」って理想だけど、維持し続ける秘訣って?どうやって測ってるの?そのあたりをズバリ聞いてみました。
A3: 生巣様の回答
「会社としては、エンゲージメント調査で定期的に見ています。あとは、プロダクト開発のチームには、スクラムがうまく回せているか等を事前に定めた一定の基準に沿って、アンケート形式で回答頂くようにしています。その中に、関係性についての質問も入れています。アンケートを取ると、色々な気づきがありますね。ただ、事業部との関係など、どこを回答の範囲とするかによって結果にばらつきがあるので、そのあたりも、今後うまく測れるように改善していきたいと思っています。」
ここがポイント!
会社としてエンゲージメント調査の実施
開発チームには関係性についてのアンケート
アンケートを課題や気づきのきっかけに
回答単位によるばらつきを改善予定
Q4
こちらの現場だと業務部署がプロダクトオーナーで、スクラムについてコーチングしても、なかなか従来通りのやり方を変えてくれないです。何か良い方法あるでしょうか?
現場の切実な悩み、プロダクトオーナーの意識改革。従来の手法にこだわるPOを、どう説得する?具体的なアプローチ方法を探りました。
A4: 生巣様の回答
「やっぱり、コミュニケーションが大事ですね。小さく分割してリリースすることに、どんなメリットがあるのか、理解してもらうことが重要です。例えば、『実験的に一定期間、このやり方でやってみませんか?』と提案して、実際に効果を実感してもらう。そうやって、プロダクトオーナー自身のメリット、例えば最終的には、マーケット投入のスピードが上がるということを、一緒に体験してもらうことが大切だと思います。」
ここがポイント!
コミュニケーションが重要
小さく分割してリリースするメリットの理解を促す
実験的な取り組みの提案
マーケット投入のスピードが上がることを一緒に体験し、メリットを実感してもらう
Q5
アジャイル推進において、様々なステークホルダーと調整が必要になる場面があるかと思います。例えば経営層、ビジネス部門、開発部門、非開発部門など、それぞれのステークホルダーと合意形成を図る際に、特に意識されていることは何ですか?また、過去に、最も難しいと感じたステークホルダーとの調整があれば、そのエピソードと、どのように乗り越えたのかを教えていただけますか?
多くの関係者との調整が求められるアジャイル推進。多様なステークホルダーとの合意形成、そのコツは?さらに、過去の失敗談から得られた学びとは?実践者ならではのエピソードを引き出しました。
A5: 生巣様の回答
「相手の立場に立って、具体的な成果、アウトカムを伝えることを意識しています。以前、特定のステークホルダーばかりを気にして、現場の意識とズレてしまって、失敗したことがありました。その経験から、現場からのボトムアップも大事だと学びました。特定のだれかというよりは、現場でうまく進めていき、うまくいったことをステークホルダーに伝える、その方がいい結果につながると考えています。」
ここがポイント!
相手の目線でアウトカム(成果)を伝える
特定のステークホルダーだけでなく現場の意識を重視
現場からのボトムアップが重要
うまくいったことを伝えることが、良い結果につながる
Q6
資料作成のモブは、ドライバー、ナビゲーター、モブで分かれた上で、あるタイムボックスによりローテーションで回すオーソドックスなやり方でやれていますか?
モブプロ実践のリアルな姿とは?型どおりの運用か、それとも独自のスタイルか?その実態に迫りました。
A6: 生巣様の回答
「そこまで厳密にはやっていなくて、みんなで一緒に考えながら、レビューや相談をするような感じで進めています。役割を固定したり、時間で区切ってローテーションしたりは、特にしていません。ただ、そうやって一緒にやることで、情報共有やスキルの伝達がスムーズにできるので、メリットは感じていますね。」
ここがポイント!
厳密な役割分担やローテーションはしていない
一緒に考えながら進める
情報共有やスキルトランスファーにメリット
Q7
「気になったらすぐ聞く」という文化を醸成するために、様々な取り組みをされているとのことですが、取り組みを始める前と比べて、チーム内の質問の「質」や「量」に変化はありましたか?具体的にどのような変化があったのか、教えていただけますか?
心理的安全性を高めるカギ、「すぐ聞く」文化。その取り組みによる具体的な成果とは?質問の「質」と「量」の変化から、その効果を明らかにしました。
A7: 生巣様の回答
「ワーキングアグリーメントで、ルールを決めました。途中から入ったメンバーでも、何でも言っていいんだという環境は作れたと思います。あとは、毎朝、朝会をやっているんですが、そこでも気になったことをどんどん聞いてもらうようにしています。15分の予定なんですが、いつも時間ギリギリか、ちょっとオーバーしてしまいますね。チャットツールでも、思いついたらすぐ聞いてもらうようにしています。同じことを何度も聞かれるのはお互い大変なので、そういう時は、調べ方も一緒に伝えるようにしていますね。」
ここがポイント!
ワーキングアグリーメントでルールを設定
朝会やチャットツールを活用
15分の朝会が時間ギリギリ、または延長しかける
繰り返し同じことを聞かれたら、調べ方も伝える
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編集後記:アジャイル推進の「生の声」から見えた、成功への道筋
今回のアジャパー・ランチ Vol.1、NTTドコモ生巣氏へのインタビュー、いかがでしたでしょうか?オンライン配信後の質疑応答ということで、限られた時間ではありましたが、アジャイル推進の現場の「生の声」を聴くことができ、非常に貴重な機会となりました。
質疑応答でのポイント
質疑応答を通じて、特に聴衆の関心を集めたのは、以下の3つのポイントだったと感じています。
「自走」の定義と判断基準: パイロットプロジェクトが、いつ、どのように「自走できるようになった」と判断されるのか。これは、アジャイル導入を検討、実践している多くの方々にとって、最も気になる点だったのではないでしょうか。
社外パートナーとの協働: 多くの企業が社外パートナーと協働する中、どのように壁を乗り越え、円滑にプロジェクトを進めているのか。具体的な工夫や苦労話は、非常に参考になったはずです。
心理的安全性の確保と「すぐ聞く」文化の醸成: 心理的安全性が重要視される昨今、それを高めるための具体的な施策、そして「気になったらすぐ聞く」文化を根付かせるための工夫は、多くの聴衆の関心を集めました。
生巣様が示した、アジャイル推進の方向性
これらの問いかけに対し、生巣氏は、NTTドコモでの実践例を交えながら、明確な回答を示してくださいました。その回答から見えてきたのは、以下のようなアジャイル推進の方向性です。
現場主義
特定の理論や手法に固執するのではなく、現場の状況に合わせて柔軟に対応することの重要性。人間中心
心理的安全性やフラットな関係など、チームメンバー一人ひとりが働きやすい環境を重視する姿勢。継続的改善
アンケートやフィードバックを通じて、常に現状を把握し、改善を続けることの大切さ。アウトカム重視
ステークホルダーに対しては特に、成果がどういうものが出るかを相手の目線で伝え、合意形成を図る。
明日から実践できるヒント
生巣氏の言葉の端々からは、一朝一夕にアジャイルは根付かない、しかし、諦めずに試行錯誤を続けることで、必ず道は開けるという、強いメッセージが伝わってきました。
「まずは小さく実験してみる」「雑談チャンネルで積極的にコミュニケーションをとる」「ワーキングアグリーメントでルールを定める」など、明日からでも実践できるヒントもたくさんありました。
今回のインタビューが、皆さんのアジャイル推進の一助となり、より良いチーム、より良いプロダクトづくりに繋がれば幸いです。
最後に
限られた時間の中で、熱心にご回答いただいた生巣様、そして、たくさんの質問を寄せてくださった視聴者の皆様に、改めて感謝申し上げます。
アジャパー・ランチでは、今後もこのような貴重な学びの場を提供してまいりますので、ぜひご期待ください。