
シュルレアリスム的電気鼠 (古代ローマの遺跡とプーリア州を巡る旅⑨)
2024年11月4日月曜日(三日目)
ローマの玄関口

地下鉄でclosseo(コロッセオ駅)からflaminio(フラミニオ駅)へ。
駅を出るとすぐにポポロ門がある。
鉄道がない頃はフラミニオ街道を通ってローマに入ろうとする者が必ず通る門であったらしい。
ベルニーニの装飾を見上げる。ポポロ広場は見通しがよく、正面に双子教会と呼ばれている二つの教会がある。
門の横にあるのがBasilica di Santa Maria del Popolo(サンタ・マリア・デル・ポポロ聖堂)でここにもカラヴァッジョの作品があるはずだった。
しかし、ここでもカラヴァッジョに逃げられる。
深緑色の古びた扉はどうしてかいつまでも閉じたままだった。
入り口が他にあるのかと思い、丘を上ってみたり、周囲をまわってみたりしたが入れそうな扉はない。
ローマの路地裏の食堂

カラヴァッジョは一旦諦めて腹ごしらえ。
道中、相棒はヒョウのデザインが目立つ店で香水を買っている。サンダルウッドを基調にしたスパイシーな香り。
スペイン広場からほど近い路地裏の食堂CANTINA BELSIANAでランチをとる。
カチョエペペとアマトリチャーナ、ローマ名物をいただく。


アマトリチャーナは甘い味付けで旨みを感じる乾燥した牛肉がアクセントになっている。
私はきりっと冷えたミネラルの強い白ワインをたっぷりと飲む。
ドルチェとして、ティラミスの専門店POMPIを見つけたためクラシックなティラミスを頂く。

カカオパウダーがしっかりと苦い。
たっぷりとかけられた岩のようなチョコの塊が食感のアクセントになっている。大満足。
ジェラートの種類も選びきれないほどある。

相棒は何故か真っ青なジェラートを選び、一口食べて早速こぼしていた。
見た目から想像のつかない普通のミルクのような味で、結局何のフレイバーかは謎のままだった。
夕暮れの散歩
スペイン広場へ。
元々はスペイン大使館があったことからその名がつけられている。
ゆったりとした階段で眺めもよく、くつろぐにはとても良い場所であるはずだ。
客が多すぎる点を抜きにすれば。

観光客は時計台を前にポーズを決めて写真をとっている。
階段を上る。日差しが暑かった。頂上にはフランス王が建てたという豪勢な教会がある。

Basilica di Santa Maria del Popolo(サンタ・マリア・デル・ポポロ聖堂)がそろそろ開いている頃ではないかと思い、再度ポポロ広場へ。
日が傾きかけていた。
広場の中心に立つオベリスクの下にピカチュウと思わしき着ぐるみが立っている。

西洋文明のエッセンスをそこら中に感じる広場の中にそのキャラクターは明らかにミスマッチだった。
いや、むしろシュルレアリスム的な風景ともいえるのかもしれない。
しかし、その着ぐるみに集うイタリアの子どもたちは目を輝かせていた。
何も言えないと思う。
さて、とうとうカラヴァッジョの作品との対面だ、と思った矢先。
西陽が強く差す中で目当ての教会の扉が閉ざされているのを呆然と眺める。
向かいの建物に人がいたので念のため聞いてみようということになる。
レセプションにいた無表情な警備員らしい若い男性が立ち上がり、双子教会のひとつを指さす。
あそこだという。
明らかに場所が違う。
念のため、入ってみたが当然カラヴァッジョの作品はなかった。
我々は途方に暮れて、ピンチョの丘を上る。

太陽が一日の最後に力強い光を街に降らせる。
オレンジ色の中にローマの街が包まれる。
カメラを抱えた人々がテラスに殺到していた。
後ろでスピーカーとマイクを持参し、歌いはじめるおじさん。"forever young〜"と何度も繰り返す。
大いなる歴史の上に耐え難い俗っぽさが根を張って出来上がったローマという街の縮図を見た気がした。
続く