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クラフトビールならぬ「クラフトサケ」の衝撃!

クラフトサケという言葉を御存じだろうか?

副業とは言え、まがりなりにもワインという酒類をレクチャーする仕事に就いている身でありながら、つい最近初めて遭遇した単語

だってソムリエのバイブルと呼ばれる日本ソムリエ協会教本(2023年版)の酒類飲料概論のどこを探してもそんな単語は出てこないし!(言い訳)
※実は24年版には載っているよ! ってことだったら教えてください (^^;

私が遭遇した、この衝撃的な美味しさを読者諸氏にお伝えしたい!
そしてこの感動をくれた蔵元さんもこの際紹介したいっ!!
そんな情熱に駆られて執筆開始


クラフトサケとは?

クラフトサケとは何だろう?
世の中には何でもなんちゃら「協会」なるものがあるもので(失礼)クラフトサケについてもなんと!クラフトサケブリュワリー協会なる協会がありましたよ!
同協会によるとクラフトサケの定義とは、

日本酒(清酒)の製造技術をベースとして、お米を原料としながら従来の「日本酒」では法的に採用できないプロセスを取り入れた、新しいジャンルのお酒

クラフトサケブリュワリー協会

とのこと。

「法的に採用できない」というあたりに不思議とアウトロー感があってステキに感じてしまう。

ちなみに同じクラフトの名前を冠するクラフトビールについての定義については明確なものはないらしく、ビール業界の雄キリンビールのHPを参照すると、

「造り手たちの創造性が生む多様なおいしさで、人生の楽しみが広がるビール」

キリンビール よくあるご質問ページより抜粋

とのこと。
クラフトビールにしてもクラフトサケにしても、両者に共通するのは

作り手側:規制に縛られないからこそできる自由な醸造、表現の追究ができる点
飲み手側:未知・未体験の味わいの追究ができる点
があると言えるだろう。
このあたりにクラフト酒がウケている秘密がありそうだ。
これは何ともロマンのあるお酒じゃないか!

ただ、日本ソムリエ協会 Sake Diploma資格保有者の友人曰く、
私のような肯定派がいる一方で、
「米と水からできるものが日本酒なり!」
「クラフトサケは邪道」
と思うような人たちも一定数いるらしい。。
そういう人たちにコペルニクス的転回が訪れるのはまだ歳月を要することなのかもしれない

言葉としてはまだ新しいクラフトサケなのかもしれないが
よく引き合いに出されるのは日本の伝統的な酒である「どぶろく」。
酒の醪(もろみ)を液体部分と酒粕部分を分ける、いわゆる漉すプロセスがなく酒粕が混じっているため、どぶろくは古くからあるクラフトサケの一種と言える

クラフトサケが広まっている背景

日本酒好きな人にはもはや当たり前の事実なのかもしれないが、クラフトサケを調べている中で興味深い事実が分かった。それは

「クラフトサケ醸造に清酒製造免許は不要」
ということ

国税庁の分類では、クラフトサケは「清酒」ではなく「その他醸造酒」
(私の好きなワインには「果実酒」という分類がきちんとある)

その他醸造酒にあたるクラフトサケを醸造するのに清酒製造免許を要しないというのはなるほど自然な感じがした。

私がそれ以上に興味深いと思ったのは、我が日本では現在清酒製造免許の新規交付は行っていないという事だ
(近年のJapanese Sakeの流行を受け、令和3年の酒税法改正で輸出用に限り清酒製造免許申請が可能にはなったがこの点は別の投稿で触れることとしたい)

国税庁:酒類等製造免許の新規取得者名等一覧
近年の各酒類の製造免許取得名一覧を見ても清酒だけそもそも欄がない (^^;

50年前に比べて消費量が30%(※)に落ち込んでしまっている中で新規参入者を増やしても意味がないからとも言えるし、これにより既存の酒蔵さんを保護しているとも言える。

※ 清酒消費量 昭和45年 1532 ⇒ 平成22年 558 (単位:千㎘)
  日本酒造組合中央会の公開データより

ワインやシードルを醸造する果実酒醸造場がわずか2016年から2018年の3年で1.2倍に増えている事実とは好対照だ。

清酒の美味しさに触れ、
「自分もこんな日本酒を、これを超える日本酒を造ってみたい!」
と夢を抱いた若者が選ぶ選択肢には、清酒造りを行う酒蔵の新規立ち上げというものはなく、既存の酒蔵の門を叩くことに可能性を狭めてしまっていることは何だかさみしい思いもした。

そうした制限・規制からやむなくクラフトサケ醸造を始める方も多いという。
ただ、結果的に日本酒の新ジャンルとしての日本酒をアップデートし、表現や味わいの多様性が生まれたことは消費者の一人としてはウェルカムだし、日本酒の新しいファン層を築きつつあるというのは清酒製造免許の新規交付を行わなかったことの怪我の功名と言っても良いのかもしれない。

このクラフトサケがとにかくおススメ!

今までお酒と言えばワイン、ウィスキー、次点でクラフトビールだった私。
そんな私が
「日本酒の見方を変えるクラフトサケに出会った~✨」(下條アトム風)

のは以下のクラフトサケに出会えたから

TSUCHIDA × TSUKE KIMOTO HOP NIGORI NAMA
(つけたろう酒店)
3,500円(税込)

熱燗の素晴らしさを広めているその名も「熱燗DJつけたろう」さんと、
銘酒「誉国光」などで名高い土田酒造さん(群馬・川場村)のミラクルコラボで生み出された逸品!

酒の名に「HOP」が書いてあることからも、そう御明察。
土田酒造さんのにごり酒にビールのホップを添加したクラフトサケ。
あぁ、記事を書いているそばからまた飲みたくなってきましたw

自分が飲んでいるのは日本酒なのか⁉ビールなのか⁉脳がバグる楽しさ

つけたろうさんが会員以外への一般向け販売解禁の第一号として販売する酒だけあって、並々ならぬ思いを感じる

見てくれはにごり酒ベースなので当然白濁しております。
特筆すべきはそのアロマ。
ホップの華やかでフルーティーな薫りがプラカップを鼻に近づけずとも鼻腔をくすぐる…飲む前から美味い!
色々な果実の香りを感じるワインを「フルーツゾーンが広い」と表現しますが、この一本もフルーツゾーンの広さをふんだんに感じられます。
水滴に艶めく女性のエチケットが、甘美なこのアロマを良く表現しているかと。
口に含むとややとろりとした立体感のあるテクスチャを感じた後、アロマで感じた若い和柑橘、バナナ、すりおろしりんごなどの香りがふんわりと口中を満たします。
クラフトビールのような…にごり酒のような…この両者を高い次元で融合させたこの作り。クラフトビール好きも日本酒好きも、もちろんワイン好きも満足間違いない味わい。余韻も緩やかに長いので、お酒が苦手な方でも少量で十分楽しめる

つけたろうさんがこの酒を評してこう記載しています

このお酒を飲んだ方に、クラフトサケの可能性を感じてもらえる1本になっているはずです!

まさにつけたろうさんと土田酒造さんの術中にハマりました。
クラフトサケの虜です

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