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赤べこ【短編小説】
ここに、一つの赤べこがあります。
揺らします。
ゆらゆらゆらゆら。
優雅に頭を上下に振っていますね。
更に揺らします。
ゆらゆらゆらゆらゆらゆらゆら。
さっきより早い速度で揺れましたね。
では限界値まで揺らします。
ゆらゆらゆらゆらぐんぐんぐんぐんどだどだどだどだ。
赤べこの頭が、上下左右斜めにまで揺れてきましたね。このまま続けます。
どだどだどだどだどだどだどだどだどだどだどだどだ
どんっ!!!!
首が、もげましたね。
この赤べこは、私自身なんです。
共感するにも限度ってものがあります。
共感の過度な強要は、人の気力や魂を傷つけてしまうのです。
人の数だけ信念が存在します。
互いの信念が尊い光に包まれた時、私たちは初めて、お互いを尊重し合える事ができるのです。
だからお願いします。もう私に同意を求めないでください。自分で自分を納得させてください。お願いします…。
あんた、、、そんなくだらない事を言うために、わざわざこんな薄暗い部屋に私を呼びつけたのかよ、、、
もういい加減にしてくれよ!こっちは忙しいんだよ!
あんた普段は何にもしゃべんないじゃん!だからこっちは必死で会話の話題を考えて考えて、あんたを退屈させないようにって思いながら会話してたんだけど!それなのに、それなのにこの言われようは何!?だったらあんたも普段からそのくらい喋りなさいよ!!ああもう我慢ならない。これだから働いていない人間は嫌なんだよ!社会の事を何にも知らないくせに、社会が怖いからとかいう訳のわからない理由で部屋に篭りやがって。結局あんたは、自分が傷つくのが怖いだけなんじゃん!!小学の頃までのあんたは、明るかったから友達でいられたけど、中学から信じられないくらい暗くなったから、本当は縁を切りたかったんだよ。でも親が許してくれなかったから、仕方なく今日まで一緒にいてやったんだわ。そんなことも知らずに、堂々と自分の意見をいいやがって。あんたなんかねぇ、一生この薄暗くて汚い部屋で、その惨めな人生を終えればいいんだわ!!さようなら、我儘さん。もう金輪際、私に関わらないでください。あんたと今日限りで縁が切れて、ほんと清々するわ!
ううう…、なんで、なんで分かってくれないの…。社会は…、怖いところに決まってんじゃん…。だって、だいたいの潜在意識が、この世を恨んでいるんだから。その念が、私の脳内に直接届いてしまうんだから。そんなところ、怖いに決まってんじゃん…。どうして、どうして誰も信じてくれないの…。なんでみんな、魂が喜ぶ生き方をしてくれないの…?みんながそういう生き方をしてくれたら、私はようやく、部屋から出られるというのに。。。私だって部屋から出たいよ。だからお願いします。心の声を、聞いてあげてください…。