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ショートショート

#桜の季節
「こんなに綺麗なのに、桜の季節は、すごく
切なくなくて苦手なの」
そういいながら、彼女ははにかんだ
「そうか、桜って儚いイメージあるから
かな?」
そう答えながら満開の空を見上げた
「そうかも何故か、わからないけど
子供の頃から苦手でて」
桜の季節が苦手な人もいるんだなと
内心思いながら
つきあい初めて、初めての春を一緒に
過ごす彼女の
意外な一面を知った。
そういえば、映画とかでも
わりと涙もろかったなと、俺は思いながら
「いい方法が一つあるよ」
と彼女に言った
「何?」と少しきょとんとしながら
俺をみる彼女
「俺と来年も再来年もずーっと一緒に
桜を見よう
切ない季節を明るくする、絶対寂しくさせない
」きょとんとする
彼女「…それプロポーズ?」そう言いながら
半泣きになりそうになっていた
しまった!俺は今言ったのに
もう泣かせてしまった
「ごめん、ごめん!びっくりさせて」
平謝りする俺に、
「…違う嬉しくてこんな嬉しい春あるんだ」
彼女は涙をぬぐいながら
そう答えた。
俺は彼女の手を握りながら、「絶対約束する
切ない春は来ない
嬉しい楽しい春を、ずーっと一緒に迎えよう」
舞い散る桜吹雪の中
頷く彼女。一生忘れない
あれから何十年経ったろう
今年老いて、嫁になってくれた彼女も
去年の春に先立ってしまった
「ごめんよ、一人にして時期
俺もいくから一人の春にはしないから」
俺はそう言いながら、冬枯れの墓地で
嫁の墓に話しかけてみる
「大丈夫、ありがとう」
そう嫁の声が背後から聞こえた気が
した。
慌てて振り返ったが誰もいるはずもなく
立ち上がり
歩き出すと、近くに桜の木が見える
近寄ってみると、まだまだ
固い蕾だが、これが開花するとき
また嫁に逢える。
またプロポーズをしよう
今度は永遠に一緒だ。


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