プライベート/ビジネスジェット 現役フライトアテンダントのつぶやき
人生は短い。いつの間にこんな歳に?とゾッとする瞬間があるほどに、短い。
この仕事に恵まれ、それはそれはキャピキャピ☆彡、素敵な国に行けば、お買い物をして散策して、世界中を飛び回る自分にどっぷりと酔っていたあの頃。若くて何もできない頃が、一番楽しかったかもしれない。あれから5年、10年、15 年、、、。あれよあれよと時間が過ぎて行った。
もう既に華やかさなんぞ、どこかに置いてきてしまった。キャピキャピな気持ちは減り、重~い責任感はずっしりと増えるいっぽう。
あぁ荷物が重たすぎる🧳。腰が痛い。足が痛い。制服スカートサイズアップ😱
眠たい。朝の3時に起きて、"おぉぉぉぉ眠すぎる、まだ眠っていたい"
でも、行かなくちゃ。。。這いずるようにホテルを後にすることもある。
眠たくても、たとえ体調が悪くても、ビジネスジェットでサービスするのは、私しかいないのだ!
私しかいないの⁇ と思われた方もいるはず。
そう、多くのビジネスジェットにおけるアテンダントは、一人で乗務する✈
その前に、まずは、ビジネスジェットについて、説明しておこう。
【ビジネスジェットとは】
ビジネスジェットとは、企業が所有しているプライベートジェットのことで、その企業のexecutivesが海外出張をする際に、ジェットを飛ばし、サービスをする、というもの。旅行や遊びに使うのではなく、ビジネスのために使うから、ビジネスジェット、または コーポレートジェット、と呼ばれる。
アメリカやヨーロッパでは、随分前からメジャーなビジネスジェット。
世界をリードする5企業、GAFAMの役員さんたちも、もちろん、会社がビジネスジェットを所有しており、所有していること自体は、隠すことなく公表されている事実である。
ただ、日本では贅沢なイメージが先行し、"うちの会社はプライベートジェットを所有しています。"なんて、堂々とは言えない風潮が、2024年現在でも続いている。
日本の幾つかの企業も、もちろん所有している企業はあるのだが、ある意味、機密事項となっている。CO2削減の観点からも、最近はさらに、ジェット自体が悪者になりつつもある。
時々、ハリウッドスターなどがジェットで移動しているが、会社自体がジェットを所有している場合と、外部からチャーターしている場合がある。
余談ではあるが、映画会社のDreamworksの持つビジネスジェットのアメリカ人アテンダントに会ったことがあるが、「時々ハリウッドスターが乗ってくるよ」と聞いて、「いいなぁ、うちは企業のおじさんばっかりだからなぁ」と心の中で嘆いたことがある。(口が裂けても声にはしないけれど)
【アテンダントへの道】
自社保有のビジネスジェットがあり、乗務員もそこで雇用されている場合、アテンダントは、自社が所有するジェットで運航できるため、搭乗されるお客様も同じ会社の役員様などで、馴染みのある方が多く、乗り慣れた飛行機で、地に足を付けてサービスができる。
ただ、プライベートジェットに乗務したいと願う人は、世界中に常に何万人といる。プライベート機を運航している企業に採用されたらラッキーとしか言いようがないのが残念なところだ。
チャーターされるプライベートジェットに、一度きりの契約で乗務するコントラクト、として登録する人も多い。雇用されているアテンダントよりも、お声がかかるのを延々と待っているアテンダントの方が多いのが現状である。というのも、会社がジェットを保有していない場合に、例えば、その会社のCEOがプライベートジェットで海外出張を望めば、他から飛行機をチャーターすると同時に、それを操縦するパイロットやサービスするアテンダントを見つけなければならない。コネで探す場合もあれば、募集をかける場合もある。時には、私の会社のような、自社の社員たちでは人手不足になるくらい忙しい時、登録されているコントラクターから一人を選び、お願いすることがある。
コントラクトで飛ぶためには、一定期間の乗務経験が必要となる。そして、アメリカで行われているプライベートジェット乗務に必要となる高額な訓練を自腹で受け、資格を取得したら、リストに名前を登録しておき、その都度面接を受け、お声がけやコネを待つ、という仕組みとなる。その面接においても、アメリカらしく、料理の腕前を披露したり、語学を披露したり、自分が最高である所以をプレゼンすることがある。自己アピールをどこまで出来るか、がアメリカでは大切である。その上で、選考に選ばれたら、初めて乗る飛行機に乗り、どこに何があるのか、を把握する作業が待っている。先方の会社に問い合わせ、搭乗されるお客様についての情報をいただき、様々な準備をしなければならない。お客様の役職を把握し、時にはご家族やペットを連れて来られる場合もある。お身体が不自由な方、アレルギーをお持ちの場合もあるため、前準備は、全行程の中で最も大切な作業といっても過言ではない。それでも、もしお客様に気に入られたら、また次もその次も、専用アテンダントとしてお声がかかったり、うちで働かないか?とヘッドハンティングされるチャンスもあるかもしれない。そうなれば、お給料も破格だ。
ということで、いまだに、よく受ける質問に、"どうすればプライベートジェットやビジネスジェットのアテンダントになれるのか?"というものがある。
日本では、募集自体が限られ、狭き門かもしれないが、現時点では、採用情報を常に確認し、まずは履歴書を見ていただくお願いをするところから始めてみると良いだろう。募集をしていなくても、履歴書を預かっていただける会社があるはずだ。時々募集している場合もあるので、様々な媒体から情報を得られるようにしておくと良いと思う。
もしくは、あなたが若ければ(30歳未満)、労働が許されるイギリスやカナダ、オーストラリアで、ワーホリビザで民間の航空会社に応募するのも一つの手段だ。そこからヘッドハンティングされた人もいる。
ただ、私はコンサルタントでも何でもないので、採用に関する話には、もっぱら疎いので、ここまでにしておこう。
さて、前述したように、プライベートジェットにおいては、機内でお食事などをサービスをするアテンダントは、一人しかいないのだ。
【責任】
会社の方針や飛ぶ距離によって、色々なかたちがあるものの、ビジネスジェットは、基本的には、パイロット2名、整備士1名、フライトアテンダント1名で運航される。よって、一度フライトに任命されたら、アテンダントは自分だけであり、代わりがいないのだ。
責任重大。
私は一度だけ、外地で食中毒になったことがある。ものすごく気分が悪い中、ミールサービスを予定していたため、オエオエになりながらも準備をし、キャビンに出る時は笑顔で、ギャレーに戻ればトイレまで一直線、フライトが終わった頃には、顔が真っ青で脱水気味、病院で薬をもらい、ホテルに戻り、出すものを出して、翌朝まで干からびていたことがある。二度とあんな思いはしたくない、という気持ちから、今では提供される水や氷、食事にも気をつかっている。
家族を急に亡くした同僚も、それを伝えずにフライトに行こうとしていたことがあった。さすがに、彼女が喪主であったため、事情が事情なだけに、交代となったのだが、そのくらいの覚悟で臨む必要がある。
ただ、業務規約に従って、事前に有休等休みを取っておけば、そこにフライトが入ることはない。
このような自己管理含め、コントロールが大変でもあるが、それでも、嫌だと思ったことは一度もない。そして、今の仕事が、始めた頃よりも、もっともっと、ずっとずっと大切に思える今日この頃。
訪れる場所での経験や、フライトの体験なども、今後ご紹介できたらと思っている。但し、情報をあまり公にしたくない場合には、有料記事に設定する場合もあることをご了承いただきたい。
【CAとFAの違いは何?】
ところで、日本では、JALでもANAでもLCCでも、主要な航空会社では、客室乗務員のことを、Cabin Attendant(キャビンアテンダント)、略してCAと呼ぶ。ちなみに、航空業界では、主要な航空会社のことを、コマーシャル=商業機と呼ぶ。決まったお客様たちを乗せるプライベート機と、不特定多数のお客様を乗せるコマーシャル。このサービスの違いについても、また次回以降に述べていきたい。
CAのCはCabin=客室。文字通り、客室でアテンドする乗務員、ということである。だが、私が縁あって現在の会社に採用されてから、呼び名はFAになった。Flight Attendant(フライトアテンダント)と呼ばれるようになったのだ。
なぜなら、本来なら、飛行機の乗務員の業務は、客室でアテンドするのみではなく、フライト全般をアテンドするから、である。
キャビンケア以外にも、保安業務、Pilotケア、フライトの外でも、その責任は大きい。パイロットが運航業務と操縦でお客様の命を預かっているとすれば、アテンダントは、自分の知識や経験でお客様を守り、誘導し、緊急時ではない場合も、良い時間をお過ごしいただけるよう、総合的なケアをする役割がある。(誤解のないように言うと、やはりキャプテンが一番要の存在、いつも安全な運航をありがとうございます、キャプテン様。)
私達の訓練も、過酷で厳しいものである。キャビンでニコニコしながら食事を提供しているだけではないのだ。
ということで、なるほど!そうだそうだ!と思って以来、自分の中では、Cabinのみに限定されるCAではなく、私はFA=フライトアテンダントなのだ、と認識するようになった。
ただ、CAの方が、綺麗なお姉さん感増し増しなことは否めない。
そんなこんなの日々の中、先日、ネイリストさんに訊かれた。
ネイリスト:「〇〇さん、CAさんですか?」
私:「え、、、。そうなんです。CAしてます。あはは」
こんな場面で、わざわざ「いいえ、私はFAです」とは言えないが、
未だにCAと言われると、なんだかくすぐったい気持ちになる私であった。
今日のところはここまで。
ご一読ありがとうございます☺️
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