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牛板九由
2016年3月30日 12:17
晴人たちはアジトである空き家にいた。作戦は成功した。誰も捕まることなく取り返すことができた。しかしこの場は何故か重苦しい。誰も笑みを浮かべず、深刻そうな顔をしている。「まじで撃ってきたのか?」「ああ、当たってないけどね」その場にいなかった賢也の問いかけに晴人はいつものような軽さで答える。完全にスイッチが切れている。一時間前。晴人を狙った銃弾は晴人の足下近くを撃ち、晴人に当たることはなか
2016年3月23日 18:55
翔たちに留置場を任せた晴人たち四人は取調室に向かっていた。途中途中現れる警察官を何の躊躇もなく殴り飛ばし踏みつけて行くが目的の場所までの道のりが遠い。さらには取調室に着いたのはいいが、こちらが誰だかわかっているかの如く、その扉の前には八人の警察官がいた。「四人ぼっちで何する気だ?」「言わなくても分かるだろ?テメェらを倒して翔和を助ける」その言葉を口火に戦いが始まった。最初に動いたのは菜々
2016年3月17日 00:06
午後六時五十分。十分前に集合場所に着く。これより早く着くと頭としての面子が保てなくなり、これより遅いと時間通りにならなくなる。これが晴人なりの最善の時間なのだ。集合場所にはすでに全員来ており、気合い十分に見える。仲間を取り戻すのだ。気合いでなんとかなるわけではないが、気合いを入れなくては何もできない。晴人は話を止めさせ、全員が自分を見ていることを全身で感じながら言った。「これより作戦を開始
2016年3月9日 22:23
翌日。晴人は憂鬱な気分で街中を歩いていた。時刻は九時五十分。今にも雨が降りそうな曇天。晴人の髪を見て汚物を見るような蔑んだ目線を送る歩行者。楽しそうな声で話す女性集団。全てが晴人の不快係数を上げる。何が晴人の気分を害していると思う?それは昨日双葉と会って話をしてしまったこと。それは行き先が今晴人が一番行きたくないところであること。それはこれから起こるであろうことが嫌で仕方が無いこと。それでも
2016年3月2日 21:44
双葉はゲームをする晴人の後ろ姿に畏怖の念を抱いていた。昨日会ったときとまるで正反対な背中。当たりの良い、明るくて、少しお調子者だったはずだ。それが今は恐怖さえ覚える、鬼か悪魔に見える。「なになに?知り合い?」「ちょっとね」双葉は友達の質問の回答をはぐらかした。皆には知られたくなかったからだ。なぜならアイドルの双葉が不良と知り合いなんてばれたら騒がれるだろう。双葉はすぐにまたリズムゲームのと