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「置かれた場所で咲きなさい」は間違い(コラム)

ブルー・マーリン・パートナーズ株式会社は、人々のあたらしい暮らしを支える産業と社会システムを創造する事業創造ファームです。本マガジンでは、「つながりと物語をはぐくむ地域のつくりかた」に焦点を当て、知見をお届けいたします。

ふるさとは自分が産み落とされて根付いた場所であり、植物のようにその記憶を身体に染み込ませている。ただし、自分にとって最適な場所(緯度・軽度)を探さなければならない。10代から20代にかけて地球をくまなく歩かなければならない(もちろん年齢を重ねたとしても)。そこで自分にとっての最適な場所をみつけること。それが旅をする理由である。

賢い土着の方法

先日、働き方の未来を考える「At Will Work Award」の審査員を務めさせていただく機会があった。私が審査員賞として選出したのは、花山椒の農家だった。選出に至ったのには、三つの理由がある。

第一に、仕事と生活が「融合」していること。これまでの私達の価値観では仕事か生活だったが、今後は仕事も生活も地続きにあることが大事。これまで仕事の時間は基本的にマイナス(−)、その疲労を生活や娯楽のプラス(+)で埋めるという考え方は終わりにしたい。であれば仕事の定義を金銭獲得労働でなく、自分の価値観と才能に基づいた貢献作業に変えなければならない。それが実現されていたのが第一の理由。

第二に「バリューセリング」。花山椒の生産量ではなくブランド価値をあげ、青山のフロリレージュ(当時、二十代女性に一番人気のレストラン)にハイプライスで提供していた。土地に根ざした生産者が高価格を訴求するのはとても難しい。なぜなら土地からの収穫物はある種与えられた恵みであり、それを人為的に高い価格で販売することは倫理的な矛盾を抱えるからだ。つまりこれが実現するには高度な知性と成熟した精神がなければできないことである(日本の観光業でも同じことが言える)。ハイプライスの結果として高いマージンを得られれば生活や時間に余裕ができ、将来や仲間集めにも投資が可能になる。

三つ目は、彼が仕事を複合的に行なっていることである。コンプレックスワーカーと言うが、山椒だけでなく、同じ畑で取れる収穫期の異なる桑の葉茶の栽培を仕掛け、かつ閑散期には庭師の仕事もする(ちなみに元自衛隊員とのこと)。庭師は職業幸福度ランキング1位で2200人の対象者のうち87%が幸福だと答えている職業である。やはり人に喜ばれ土と花に囲まれるのは幸福に良いことに思える。ちなみに銀行員の幸福度は44%で最下位、庭師の半分ほどである。

このワークインライフ(仕事と生活の融合)、バリューセリング、コンプレックスワーキングの3点、新しい働き方で大切なキーワードになっている。

出所:『Work Story Award』| at will work

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