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“やる気”なんてなんの意味もなさない

27歳独身。彼女なし。そこそこの大学を出て、つぶしの効かない仕事をしている僕が、紳士から教わったのは、まったく聞いたこともない新しい成功法則だった――。「学び方を学べ」「才能は幻想。すべては技術だ」「必要なことはすべて調達できる」「日本を解散せよ」……、5年前に刊行され「今こそ読むべき!」と話題の書籍を特別に無料で公開。事業家・思想家の山口揚平さんが、新しい時代の新しい成功ルールを紹介します。


「学び方を学ぶこと」が、成功への近道になる


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引き続き、僕は、先ほどの喫茶店で、紳士と話をしていた。

「君は、勉強ができたほうかな?」

「僕は普通の高校から、ごく普通のちょっと名の知れた都内の大学に行きました。そこでも特別頭がいいほうではなく、就職もそこそこのところへ……」

「残念ながら70年続いた日本の受験システムが若者の芽を潰してしまっているのは事実だ。学校は勉強は教えるが、学び方は教えないからね。勉強ではなく、まず、学び方を学ぶべきなんだ」

「受験と頭のよさはあまり関係がないのは、受験をしている時にすでに感じてましたよ。こんなことに、なんの意味があるのだろう、って」

「勉強ができない子ほど、勉強というと、ひたすら問題集を解いているイメージを持つだろう。しかし、勉強ができる子は、問題集を解くことは、自分の理解を確認する“作業”として行なっているにすぎない。それは勉強そのものではなく、勉強の“一部”だとわかっている。勉強とは、まず全体の計画があって、実行してみて(つまり問題集を解いてみて)、結果を確認して、計画を変更するという一連のプロセス全体だとわかっている」

「なるほど。僕は前者でしたね。塾に行きたくなかったから、ひたすら問題集をやってました。問題集を覚えるくらい……」

『計画・実行・修正』のサイクルを回す


「君が今受験生だとしよう」

「はい」

「君は何から始める?」

「志望校の問題集を買ってきて、問題集をひたすら解いて……」

「勉強のできる子、仮にA君としよう。A君は、最初にこう考える。まず、受験をクリアするのに必要な項目を全部出してみよう。120項目あるのか。これで全部かな? よし、ではこれを全部やるのにどのくらいの時間がかかるだろう? 1200時間くらいだろうか? 必要なお金は? 60万円かな? それを工面するには……と。合格までに必要な要素をすべて出し、計画を立てる。計画ができたら、実行に移す。つまり、ここで初めて問題集を開く。それで、いざやってみると、3割くらいしかできないことがわかる。

 そこで考える。あと7割を習得するためにはどのくらいかかるのか。そのためには、プランを変更する必要がある。しかも、ちゃんと事実を言語化(数値化)して修正する。と、こういう具合に、計画(Plan)、実行(Do)、そして結果をフィードバックしていく(See)の『仕組み』を作る」

「なるほど。『計画・実行・修正』がセットになっている」

「この3つが機能して、初めて『勉強』となるんだ」

勉強のできない子は、問題集を解くという『実行』しかしないんだ」

「そうだ。そして失敗すると『努力』が足りなかったと嘆く。ひどい時などは『気合い』が足りなかったとなる。気合いで合格したら、すべての予備校は潰れるよ」

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「計画・実行・修正」のサイクル

「サイクル」を回せば、「失敗」という概念がなくなる


「計画・実行・修正をどれだけの回数、どれだけの速さで回すか、物事の習得の仕方はそれだけにかかっているんだ。ここで大事なポイントがある。何かわかるかな?」

「ポイント……」

「A君は初め計画の実行に移した時、つまり問題集に初めて取りかかった時、3割くらいしかできなかったね」

「はい」

「しかし、ここで『3割しかできなかった』と捉えるのではなく『残り7割を習得するためにプランを立て直さなければならないことがわかった』と捉えるんだ。ここはきちんと言語化(数値化)するといいね」

「問題集にトライをしたことで、計画の修正ができた」

「そう。実行してみたが、計画と違った、ということが“検証”されたにすぎないんだ。つまりAくんは“失敗”をしてないんだ」

「失敗は凹みます」

「みんなそうだ。だが計画・実行・修正のプロセスにおいては、凹む必要がない。それは失敗ではなく、ただうまくいかなかった方法が見つかっただけということだ。このプロセスに取り組むと、そもそも“失敗”という考え自体がいらなくなる。検証が済んだらさっさとプランの修正をすればいいだけなのだから。これは精神的に非常に重要なことだ。その一方で、多くの人には、プランもフィードバックもなく、ただ実行しかない。しかも人生でたった1回、実行してうまくいかなかったら”失敗”としてやめてしまう。普通の人には、こんなふうな”失敗”という考え方が普及している。これは、学び方を学ばなかったためだ。成功する人には失敗という考えがない。だから成功するまで、修正し続ける」

「そうか……つまりこの理論を、受験勉強以外のものに当てはめていけば……」

「そうだ、あらゆるプロジェクトに応用が可能だ」

「僕は、なんでもまずやってみて、すぐにうまくいかなくて、たった1回やっただけで失敗したと思ってやめてしまっていた。勉強もジム通いも……」

「わかってきたじゃないか? あらゆる物事を、プロジェクトとして置き換えてごらん。仕事も、受験も、婚活も、就活も、起業も、ダイエットでもなんでもそうだ」

「婚活……。そういえば、この結婚式場に婚活に来ていると言っていましたよね」

「そうだ」

「その婚活も、プロジェクトとして進んでいるのですか?」

「もちろん」

「それ、教えてもらってもよいですか?」

「だめだ。プロジェクトのプランは、それだけで知的財産だ。そうカンタンには教えられない」 紳士はニヤリとほくそ笑んだ。

「ちぇ……」

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