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昭和的な“平均的サラリーマン”は100人に3人しかいない

27歳独身。彼女なし。そこそこの大学を出て、つぶしの効かない仕事をしている僕が、紳士から教わったのは、まったく聞いたこともない新しい成功法則だった――。「学び方を学べ」「才能は幻想。すべては技術だ」「必要なことはすべて調達できる」「日本を解散せよ」……、5年前に刊行され「今こそ読むべき!」と話題の書籍を特別に無料で公開。事業家・思想家の山口揚平さんが、新しい時代の新しい成功ルールを紹介します。


「大手企業」の指標は、柔軟性・言語化能力・品格と教養


「まず、柔軟性とは、“自意識の解消度合い”のことだ

「自意識過剰の自意識ですか?」

「そう。人は、端的にいえば、記憶の結晶体だ。物心ついてから様々なことを感じ、考え、体験する中で、価値観を作っていく。それらは、よくいえば美学や信念だし、悪く言えば偏見だ。人は生まれた時は丸いもの。何も偏りがない。自他の区別さえない。まったく真っ白だ。しかし、その後どんどんと知識と情報を得て、凝り固まっていく。それが“自我”だ」

「確かに、自我が強い人って周りから浮いてましたね」

「自我は厄介だ。身体でいえば腫瘍のようなものだ。このゴツゴツした心の腫瘍である自我をできるだけ持たないほうがうまくいく」

「でも、それでは、中身のない人間じゃないですか?」

「別に空っぽの人間になれとは言っていない。仕事をするということをどう捉えているかということさ。そもそも仕事とは、他人や社会に貢献することだろう? だったら、自分でなく相手に合わせられるかどうかってことが必要だ。変に自分のやり方や成功に凝り固まっている人は、人が求めることをやっているようで、自分の自我を押し売りしているにすぎない。主観や自我がないほうが、外に意識を向けられるに決まっている。そういうことを評価するんだ」

「でも、それではよくいう歯車と同じじゃないですか?」

「もちろん、柔軟性だけあっても意味がない、2つ目の要素『言語化能力』が必要だ」

「ボキャブラリーですか?」

「違う。ものごとを客観化して表現する能力のことだ」

「伝える力ですか」

「表現する方法は、言葉でも数字でも論理でもいい。絵を描いても、プログラムを組んでも、レゴブロックで表現しても、音楽でもなんでもいい。とにかく、考えや感じたことを“客観化”する技術のことなんだ」

「僕の友達に美大に行った人間がいるんですが、中学の時、クラスの出し物で劇を作ったんです。その彼が台本を書いたのですが、漫画で書いたんですよ。台本を」

「素晴らしいね。ちなみに、君の役はなんだろう……推理してみると……」

「船乗りです。セリフなしです」

「君らしいね。君の友人の武器は、“絵”だった。人は誰でも自分の得意な表現方法を持っている。それをどう使えばいいかを見極め、磨いていくことを考えるべきだ

「3つ目の要素、品格や教養だ」

「そこが一番自分に足りてないと思うなぁ」

「そんなことはない。一緒にいて楽しい人、気分のいい人になるということだよ」

「ありますかねぇ、僕?」

「でなければ、こんな爽やかな昼日向、君とこうしてテーブルを挟んではいないよ」

「ありがとうございます」

「外見でさえ、先天的なことだと思うかもしれないが、実はそうでもない。努力によって後天的に獲得するものだ。美しさは学べるし、獲得できる。君は男だから、まずは“清潔感”という言葉を大事にするといい。歯と靴を丁寧に磨き、身なりと言葉を整えなさい。女性なら、“透明感”がそれにあたる」

「美も学習ですか」

「外見とは君の顔の造形のことじゃないよ。君の努力によっていくらでも高めていくことができるんだ。身体を引き締め、背筋を伸ばし、髪を短く刈りこんで、整えなさい。そしていいかい? これが最も重要なことだ。それは君のためにやるのではないってことだ」

「え?」

身だしなみ、それは他人に対する尊敬であり、愛でもある

「身だしなみが愛ですか……」

「これは、上の階層にいる人なら持っているものだよ。逆にいえば、これを持っていれば、チャンスがあれば、上にいくこともできる。だから、自分でコントロールして高めていくんだ」

論理力やコミュニケーション力をどう使うか?


「さて、君が先に言った、論理力やコミュニケーション力という指標は、実は、この柔軟性(自意識の解消度合い)、言語化能力、品格・教養と密接に絡み合っている

「たとえば?」

「論理との関係でいえば、自意識があれば、主観的な考え方が強くなり、客観的、つまり論理的にはなれなくなる。そして、言語化能力の中で、論理は最もポピュラーな方法だ、教養や知識がなければ論理を構築するための材料に欠けることになる」

「なるほど」

「コミュニケーション力との関係でいえば、自我が強い人は、自慢しがちで人の話を傾聴できないし、言語化能力がなければ伝わらない、品格や教養は、心地よい会話の時間とキャッチボールにとって大切だ。だから、この3つの指標と、論理力・コミュニケーション力というのは、タテとヨコの関係にあるんだよ」

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「よくわかりました!」

「大手企業はこの3つで瞬時に学生をS、A、B、C、D、Eに分類している」

「階層化の元ですね……」

「大企業がとるのはBまでだ。Sクラスはそもそも就職活動をしないからね。馬鹿げたことに、電子的に履歴書をやりとりすることで、就職活動がくだらない指標、たとえば学歴などで足切りせざるを得なくなっている。お互いの本質を捉える時間とコストを採用に割けない状態だね。これはお互いにとって損な状況だ」

「もし大企業に行きたいといったら、そういうことなんですね」

「そもそも偏差値は、明治になって旧華族など貴族制度をやめることになったときに、福沢諭吉が“学問のすすめ”でこれからは、学んだものが上にいけるんだよ、と言い出してから作られた指標にすぎない。わずか100年だ。そしてそれはもう賞味期限切れだ」

「でもまだ多くの企業が使っていますよね」

「大企業は特にね。だからベンチャーは、ラッキーなことに古い指標(偏差値)にとらわれることなく、新しい指標、主体性、創造力や直観力、学ぶ技術力、真摯さ・誠実さに基づいて採用することができる」

「それは、どんなものですか」

「主体性としては、まず、悩みの解決はすべて主体的に行なう、ということ。絶対に他人のせいにしてはいけない。実際に問題は、他人との摩擦が生み出した自分の心の中にある感情のことだからね。学ぶ技術は、出会った頃に話したよね。それがすべての基本だ」

「僕は古い企業社会にいるのですが、このままで順当に人生を送れるのか。このままでは新しい時代についていけないのではないかって不安になるのです」

「そう不安がることはないと思うな。順当な人生っていっても、すでに古い企業社会でのレールは壊れているじゃないか? 平成21年の調査では、大学を卒業して大手企業の課長になる『平均的サラリーマンの日本人』は100人に3人となったんだよ。一軒家を立てて老後は年金生活なんて夢のまた夢だ。でも、心配はない。淡々と新しい世界に合わせていけばいいのだから。もっと大変なことはたくさんあるよ」

「もっと大変なことですか……」

「次はこれからの社会の価値観の変化について話そう」

「お願いします!」

「では、食後のデザートでも頼もうかな」

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