結婚は“オワコン”化するのか
27歳独身。彼女なし。そこそこの大学を出て、つぶしの効かない仕事をしている僕が、紳士から教わったのは、まったく聞いたこともない新しい成功法則だった――。「学び方を学べ」「才能は幻想。すべては技術だ」「必要なことはすべて調達できる」「日本を解散せよ」……、5年前に刊行され「今こそ読むべき!」と話題の書籍を特別に無料で公開。事業家・思想家の山口揚平さんが、新しい時代の新しい成功ルールを紹介します。
テーブルには、品のいい甘さのケーキが運ばれてきた。
「さて、デザートの時間は、甘い話でもしようか」
「甘い話?」
「結婚だ。君はガールフレンドがいないね?」
「どこを見てそう推理したんですか?」
「これは推理じゃないな。勘だよ」
「勘ですか……」
……勘で言われたほうが、傷つくものと、僕は初めて知った。
結婚は、“オワコン”化するのか?
「しかし、今からの話は、“彼女”がテーマではない。結婚がテーマだ」
「結婚……」
「君達の世代の言葉を借りるならば、結婚は“オワコン”化するということさ」
「そんなに結婚の未来は暗いのですか?」
「まずは数字で見てみよう。すでに、男性の生涯未婚率は20 %、女性の生涯未婚率は10%になっている」
生涯未婚率の推移
「女性のほうが少ないのは……」
「何度も結婚している男性がいるからだね(笑)。まさに弱肉強食の時代だ」
「確かに結婚を躊躇する人は増えている気がするな」
「理由は何だね?」
「1人が気楽だからじゃないですかね?」
「結婚は、あくまで“制度”だ。男女のパートナーシップは、本当はもっと深いレベルで自然になされるものだ。そうだろう?」
「結婚の形は、小さい頃、両親を見て学ぶものじゃないですか」
「その通り。そして、自分もいずれ結婚することが当然のように思っていた」
「はい、まあ、そうですね」
「男性と女性のマリアージュ(有機的な結びつき)は世界で最も美しい姿の1つだ。しかし、人はつながり離れ、そしてまた結びつく。一方、結婚というのは、契約だ」
「僕の友人の女性の旦那さんが、浮気をしたらしく、その女性はカンカンに怒って、旦那さんに対して、ありとあらゆる措置をとると、息巻いています。その様子を見て、あぁ、元々は愛し合っていた2人なのになぁ……と寂しい気持ちになりました」
「民法では、浮気は犯罪だ。犯罪ということは、当然罰則も存在する。“結婚”は愛で始まるが、終わりは実に殺伐としている」
「そもそも、何で結婚という制度が産まれたんだろう……」
「社会秩序の維持という意味では結婚制度はよかったが、自然システムには逆らうことになっている。そして今、人々はより自然に生き始めているんだ。数字で見てみれば一目瞭然だ。先進国の多くは、離婚率が20%に達している。私生児(婚外子)も、40%代の国が多く、スウェーデンでは54%に上る(2008年米国商務省、日本:厚生労働省、香港:Demoguraphic Yearbook Special Issues1999 Natality Statistics)。日本はわずか3%にすぎない」
「離婚は当然のことだと?」
「子どものために両親が仮面夫婦を続けているのは自然な形かい?」
「それはそうですけど……」
「別にすべての夫婦に離婚を勧めているわけじゃない。君のご両親は、今も夫婦生活を続けている。2人で助け合って、君が言うヤンキー君の制服を作り、君を立派に育て上げたことは、素晴らしいと思う」
「ありがとうございます」
「だが、お互いの愛が冷めてしまった夫婦の元で育った子はどうだろう。純粋な子どもは、愛し慈しみ合っていない両親の関係を鋭く感じとる」
「僕の家も、オヤジが一度愛人を作ったことがあったんですよ」
「君が小さい頃の話かね?」
「小学3年生の時です。おふくろが僕を連れて家を出て行った時、カーステレオからマイケル・ジャクソンが流れて、“Beat it”でした。あれ以来、僕、マイケル・ジャクソンが嫌いになってしまって……」
「だろう、トラウマとしてしっかりと心に根づいてしまう。それは子どもにとってより不衛生だ。さっき例に出したスウェーデンは、高い離婚率でありながら、私生児の比率が50%を超える。実は、子どもはすくすくと素直に育っているんだ。それは両親が離婚してもあるいは結婚しなくても、彼らにとってお互いによい距離感を保ったパートナーシップを作っているからだ。もちろん社会もそれを応援し、支えている」
「新しい夫婦の形ですか」
「そう。健全な関係が保たれれば、その分、愛情は子どもに注がれる。人は肉体でできているのではない。つながりでできている存在だ」
「つながり……」
「生物と生命は違う。生物は物理的な存在。生命は人の思い(親子でいえば愛情)の連鎖だ。人は単なる生物じゃない。生命なのだ。人の人格形成は3歳までに与えられた思いと愛情の大きさに大きく依存する。だから子どもを育てるという文脈からいえば、本質は結婚制度にはなく、注がれる子どもへの愛情にあるということだ。君のご両親は、離婚の危機を幾度も迎えただろうが、君への愛情は十分に注がれたことだろう。それは、君を見ればわかる」
「両親を見てると、将来は自分も安心できる家庭が欲しいなぁと思いますよ。一昨日の結婚式も、同級生で、子どもがいるやつもちらほらいて、見ててうらやましかったですからね。でも、今は結婚に対しては、あまり積極的ではないなぁ」
「家庭を求めるのは当然のことだ。家庭は社会の最少のコミュニティだし、最も大切にしなければならない。だが重要なのは、“結婚”=“家庭”ではない、と知っておくことだ。自律的にパートナーシップを作り上げていくことのほうが夫婦間で大事なことなのに、結婚制度に執着してしまうと、相手への愛情を見失う。つまり硬直的な制度に“甘えて”しまうということさ」
「昨日うかがった国の話と同じですね。制度や決まりがあると、そこに盲目になってしまう」
「そう。時代に合った形、何より、自分と、最愛のパートナーに合った形を考え、選択していくことが大事なんだ」
「なるほど!」
「これから日本やアジアでも結婚しない夫婦(事実婚)は増えてゆくだろう。もっと自由に人生を考えなければならない。制度や風習はその経緯を大切に尊重しながらも、何が本当に大切なのかを考える必要がある」
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