「なかなか失われない30年」【衣装ノート】

遅ればせながら
アガリスクエンターテイメント第31回公演「なかなか失われない30年」
終演しました。
ご来場いただきました皆様、配信でご覧いただいた皆様、そして応援していただいたり気にかけてくださった皆様、ありがとうございました。
とても評判がよく、ずっと笑い声が響き続けていてすごく幸せでした。
劇団としても私自身も過去最高動員で、本当にありがとうございますという気持ちです。
まだまだ今後もしぶとく頑張っていきますので今後ともよろしくお願いいたします。

さて、今回は公演の振り返りではなく、スタッフ業務として担当した衣装について記録代わりにまとめていきたいと思います。
こんなこだわりあったんだ、とかそうなってたんだとか発見があればうれしいです。配信もまだありますので、衣装(と前田友里子お姉さんと佐野木さんが頑張った小道具)も気にしながら見ていただけたらスタッフ冥利につきます。
そしてこの衣装ノートはネタバレが含まれています。まだご覧になっていない方で配信で見る予定がある方はご注意ください。

2024年組

河田(伊藤圭太)
本作の主人公。そして現代の人物。
カジュアルなセットアップは最近(?)流行ってますよね。30代~の男性がさらっと着ているのをよく見かける気がします。下はスニーカーとシンプルなTシャツが多い気がするのでそのコーデに。
色はグレーかベージュがいいなとおもっていたところ、この色のセットアップに出会ったので即決でした。時代感を出すためにApplewatch。
チラシの撮影時はワイヤレスイヤホンとマスクも着用してもらいました。(現代の情報詰め込みましたみたいだな…)
腕まくりは伊藤さんの案です。振り回されて必死な河田さん感が出て非常に良いですね。

常本(淺越岳人)
電気工事の人。現代人。
作業着にカーゴパンツ、中はおじさんっぽいネルシャツ。
他の人との兼ね合いや汚しを入れたかったのもあり、作業服は明るめのグリーン。ビジュアル撮影の前日に絵の具とクレヨンと化粧用のスポンジでえっちらおっちら汚しました。(写真だとあんまり汚く見えないですね)
スニーカーはご本人の私物。中のネルシャツは茶色のチェックのものです。
あとはおじさん設定だったので髪の毛を白くしてもらってました。白くしても淺越さんの髪のキューティクルは健在です。
2024年は総じて淡め、というかシンプルになっています。
勝手なこだわりですがここから派手な人たちがたくさん出てくるので暗くないけどシンプルに納めたかったというのが狙いです。

1994年組

中山(山下雷舞)
94年闇金事務所パートの主人公。
関係性的には大黒>中山>広瀬なので、そこがわかりやすくなるように、かつヤクザもの感が出るといいなと思って柄シャツにしました。
このシャツ見つけた時めっちゃオーバーサイズだけどこれ雷舞さん(てか中山)のためのシャツじゃないか!とひとめぼれ。
めちゃくちゃ似合ってました。スーツと靴はご本人の私物です。
さらに闇金感を出すためにゴールドのチェーンネックレス。これを襟のところからチラ見せする感じ、そうです、ヤクザもの感。(主観です)
写真では見えていませんが、ゴールドの腕時計もしています。友里子さんありがとう。

広瀬(古谷蓮)
94年組の一番下っ端。チンピラ。
ジャケットは着せずに柄シャツとタック入りのパンツ。そしてでかめのサングラスにセカンドバッグ。いや全部乗せやな。
全部乗せ感が大黒との対比にもなって、その道にあこがれているバイト感が衣装からも出せたような気がします。
写真見て思ったけど、パンツをめちゃくちゃハイウエストで履いてもらってて、本人も脚長い族なのでスタイルめっちゃよく見えるな…!?
雷舞さんと同じくゴールドのチェーンネックレス。兄貴と慕っているのでおそろいでもいいよね。あとロン毛でオールバックも若者感あっていい感じ。
個人的に広瀬のコーディネート、気に入っています。

大黒(北川竜二)
94年組のボス。ボスはシンプルに着こなしているイメージがありまして、シンプルに。
ただ、シャツは黒だったり、ネクタイがちょっと変わっていたりで、ヤクザもの感を出してみました。
前にも書きましたが、ネクタイは私の祖父が使っていたものを譲り受けました。おじいちゃんそのネクタイ本当につけてたの…?
ぺーさんの着こなしも相まって非常にかっこよく、そしてボス感が素敵。
スーツは黒にしてしまうと全体が黒になりがちだったので、濃いグレーに。中のシャツが黒いのでいいアクセントになっていると思います。
ちなみにスーツは父のです。うちの父は足と腕が短いみたいで(お父さんごめん)裾や袖を直しました。

藤井(矢吹ジャンプ)
94年組債務者の藤井さん。
対比という意味でも白めですね。この緑のポロシャツとクリームのブルゾンとチノパンの組み合わせ、めっちゃおじさんぽくていいです(ほめてます)
緑のポロシャツ、お芝居を見に行った時に時間があって寄った古着屋さんで見つけてこれは今!買うしかない!と購入しました。
あと個人的に一番気に入っているのが靴で、茶系で可愛いのです。
全体のバランス的にもいい感じだし、ごついスニーカーとかよりこっちの方が藤井さんぽい気がします。
正座している時間が長いので靴とかパンツ大丈夫かなとちょっと不安でしたが、たぶん大丈夫だったんだと思います…

2004年組

アイ(榎並夕起)
04年組デリヘル嬢のアイ。コンセプトは浜崎あゆみリスペクトのギャル。
チラシのビジュアルとほぼ同じですが、サンダルが違ったり、サングラスがなかったり、髪の毛が短かったりします。
ポイントはしっぽ。ふっさふさですね。このしっぽはあゆが流行らせたものらしい。
上のジャケットは熊谷さんからお借りした2000年代に実際に購入したものです。
服装もそうですが、メイクに結構こだわりまして、囲みメイク、つけまつげ、全体的に色を薄くといった感じです。眉毛も細くして髪の毛もブリーチしました。

ミカ(兼行凜)
04年組デリヘル嬢のミカ。コンセプトはリズリサ系女子。
当時の雑誌を探しまくっていたところ、甘いワンピースにジージャンにくしゅっとしたブーツのコーデを見つけて、誰かこの系統にしようと決めておりました。
当初は鹿島さんがこっちの想定だったんですが、紆余曲折あり、凜ちゃんがこっちになりました。結果とても似合っていたので良かった。
ミカちゃんは年齢的にも一番若い(サバ読んでる点も含めて笑)ので、きゃぴっとした格好になってよかったですね。
そして平成メイクが超似合ってて、楽屋でいつも可愛いなぁと思いながらチラ見してました。

ヒカル(雛形羽衣)
04年組デリヘル嬢のヒカル。コンセプトはかっこいいお姉さん系のギャル。
こちらも当時の雑誌を参考にして、チラシで私が頭につけていたサングラスと持っていたバッグを身に着けてもらいました。
このニット素肌に着る…?!って今だったら思いますね。
写真だとわからないですが、めちゃくちゃピンヒールのブーツを履いてもらいました。
アクセサリーは細めのブレスレットを何個かつけてもらいました。
この人が国連?!というギャップを狙う案もありましたがスタイリッシュなギャルがとても似合っていてこの路線でよかったなと思います。
ニットをインするのは羽衣ちゃんの案です。
結果一番肌が出ているコーデかもしれない。セクシーです。

クミ(鹿島ゆきこ)
04年組デリヘル嬢のクミ。一番お姉さん。
ピチッとしたTシャツにローライズのブーツカットデニム。ポイントは白のベルトとファーのベストです。これは確か雑誌の表紙のコーデを参考にしたやつです。
当時ギャルブランドで人気だったセシルマクビーのラインストーン付きTシャツ。これ見つけた時は買い!!と思いました。
あと超ローライズのジーンズもなかなか硬くて大変だったようですが綺麗に履きこなしてくれています。あと見せパン。
鹿島さんのスタイルの良さが際立ちますね。あと眉毛やメイクも当時に寄せてくれたので非常に当時の人っぽい。
靴は場当たりで買ったやつが劣化で壊れてしまったので、初日に夜のお仕事のお姉さんたちの服が売っているお店で運命的な出会いを果たして買いました。キラキラで可愛い。

2014年組

渡辺ZIN(斉藤コータ)
14年組劇団ZI-PUNKの主宰。
大石内蔵助、浅野内匠頭、吉良上野介の3役を演じるということで、衣装チェンジが多いです。
写真は大石内蔵助バージョン。基本はこのスタイルで上に羽織ったり帽子をかぶったりで違う役を表現しています。
なんといってもメイクがね。すごいです。コータさんのオリジナル?です。
回を追うごとにメイクが派手になったり、ほくろが涙になったりしていて面白かった。
頭につけている鉢巻みたいな紐もいいアクセントになってるし、指先が出てる手袋ね。手首の部分は下に着ているシャツと同じ布を付けました。
あとめっちゃ和みたいな服着てるのに英字が書いてあるハイカットスニーカー履いてるのもポイントです。

タカハシマオミ(前田友里子)
14年組劇団ZI-PUNKの人。イメージカラーが紫というのだけ決まっていて、あとはよさこいの法被っぽいのと地下足袋がいいかなと。
なかなか紫の生地でいいものに出会えなかったんですが、布屋さんで見つけて買ったら新商品だったらしく歓喜。
黒の布と合わせて左右で生地が違う法被を作りました。
あとは鉢金ですね。これは黒の鉢巻を作って、カップケーキの型の底を切り抜いて中心に付けました。あとは髪の毛がさみしかったので鉢金の下に赤い紐と襟足に紫のエクステ。
ヘアカラーチョークは前田さんの案です。
メイクがめちゃ面白くて、着替える他に違う色の点が増えていくのがまじで面白かった。あれで役の違いをどう表現しているのだ…
あと写真はないですが、怨霊のシーンは私の大学時代の弓道着の上、他の着替えは今回のために買った着物とセット売りされていた羽織や「令和5年の廃刀令」で八鍬さんが着ていた羽織を使っています。(廃刀令のだ!って気付いた方いるかな)

こちらは渡辺ZINの別衣装。
上の水色の羽織が浅野内匠頭で下の派手な羽織が吉良上野介です。
この2つは布から作ってデザインもしたんですが、袖がないロングの法被と袖が長い羽織の2種類で構成。
浅野さんの方は水色と白だけだとちょっと地味だったので金のリボンを刺繍したり裾に紺のリボンを縫い付けたりしています。
吉良さんはとくに加工はしていないですが、サテンの襟がちょっとゴールドにも見えていい感じ。
あとこの写真だとよくわかるけど、赤と黒のマニキュアしてますね。
めっちゃそれっぽくてよき。
写真がなくて残念なんだけど、一瞬だけ、烏帽子をかぶったコータさんが出てきます。それがものすごく似合っていて私の一押しです。配信で確認できるのでぜひ。烏帽子は新聞紙で作りました。あと銀の紐。

大島晶(江益凛)
14年組「FANG~赤穂狼士~」の出演者。劇中のヒロインポジション。
他の人は何役もやるから着替えるけど大島はその役しかやらないだろうなぁという冨坂さんとの協議の結果、凝った1着に。
和楽器バンドのボーカルの衣装を参考にして、羽織を加工してワンピースに。
可愛い和柄の布を4方向につけてウエストを帯っぽいリボンでしめてフレアスカートっぽく。裾はリボンとサテンとオーガンジーをフリルにして縫い付けました。
加工という意味では一番色々してるかも。
あとはカチューシャは前田さんが作ってくれたり手袋やチョーカーもみんなの案なので助かりまくりです。
白の編み上げブーツは冨坂さんのこだわり。

松井大輔(菊池泰生)
14年組「FANG~赤穂狼士~」の出演者。劇中ではおそらくモブ中心。
菊池君絶対こういうの似合うよね!と衣装打ち合わせの段階で即決だったプランです。
タンクトップに片方だけ垂れてる和柄の布。鉢金とアームカバー。
これだけで戦う系のなにかに出ていそうですもんね。
菊池君の布はとにかく派手な赤がよくて探して探してようやっと見つけた柄です。
生地が一枚だとペラッペラなので裏地もついてます。
片方だけ着るようにしてウエストを紐で締めてもらっています。
菊池君も鉢金がよく似合ってて、メイクも跳ね上げなのがいい。
鍛えているのがよくわかる二の腕がとてもいいです。
写真はないですが、劇中で一度悪役になるので、黒のレインコートときつねのお面。このビジュアルもすごく面白いのでぜひ配信で見てみてください。

おまけ

2024年の今井広瀬(古谷蓮)
イケオジになった広瀬。古谷君は目元が若いのでどうしたらおじさんに見えるかなあと考えた結果、革ジャンとかいろんな案が出たんですが、最終的に白いパンツだ!!と思い立ってこれにしました。
ちょっと昔悪かった感じも含めていい感じになった気がします。
ひげはゲネまではつけてたんだけど、付け髭感がすごいのでボツに。
サングラスも違うものを付けて、髪の毛も白くしています。(舞台監督さんと私で必死に着替える古谷君を変装させていました)
このコーディネートも気に入っています。


以上!こんな感じでした。
時代が違う14人の衣装、そして作り物が多いのは最初は絶対できない~なんて思って泣き言いってましたが、用意したものを皆さんがかわいく、かっこよく着こなしてくれてそれがすごくうれしかったです。
少しでも役の手助けになれていたらいいなと思います。
まだまだ反省点ばかりですが、今回の経験を生かして次も頑張りたいと思います(次もきっと衣装やる…と思う…!笑)

ということで
「なかなか失われない30年」衣装ノートでした。

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