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ざれごと  シロクマ文芸部


わらわは貝也


檸檬のにほひ   【604字】

レモンから色素を絞る。夕映えの消え残る山際。ハンバーガーの包み紙。うれしきときのあなたの吐息。
鼻を刺す匂いが飛び散り、房に分かたれた規則が正しく踏みにじられる。歪んだ車輪は銀河の形をして、部屋に満ちる。
目を開けていられず、落ちた薄暗がりに、あなたの顔が浮かぶ。

あなたはこんな酸性でした。どうりで冷たいはずです。約束の指輪を溶かすその色で、私の頑なも解いてください。
図らずもあの人が言っていました。感情は・・・言い換えます。喜びも悲しみも、自分のコントロールの外にあるもの、それをあてにしない方がいいと。
そうです。あなたの知っているかの方です。レモン色の爪をしていました。きっとそれで、理想という形のないものを引っ掻いた後だったのです。
かの方の射た矢は正鵠(せいこく)を得ます。*的の真ん中

君に言おう。かの人の言葉は悪戯に掻き回すのみで、聖餐に供してはいけないものだ。あえて戯れ言と言わせてもらおう。かの人は何も生まない転がる石。苔さえ寄せ付けない河原に満ちた無言の礫(つぶて)なのだ。

なにを仰る兎さん。わたくしとて阿呆(あほう)ではござりませぬ。いつしかかの方の声は山駆け巡り、地の底に響くと信じます。

おお、嘆かわしや。そなたの信仰は糞を崇めるものなれば、その糞に塗(まみ)れた手によって、絞られしレモンの哀れよ。かくも君の目を隠し、耳塞ぐものとは思いもよらぬ。
どうか目を開かれよ、心を解放されよ。そこが先ず我らがすべきこと也。

では、どうぞ我を抱いてくだされ。
        了


ベッドメイキング完了しました(`・ω・´)ゞ
ぱにゃにゃんだ❤

小牧部長さま
よろしくお願いいたします。


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