成仏宴の行く末は #毎週ショートショートnote
私の父が生まれ育った村では、葬式に宴会が催される。
亡き人を快くあの世に送るための儀式だそうで、お寺さんも加わって、賑やかに執り行われるのが習わしだ。
各家庭ではその来るべき成仏宴に向けて、せっせと積み立てをしている。
しかし、コロナ明けのこの物価高は林業中心のこの村を直撃した。物価は高くなる一方、材木にそれを反映させることができなかった。その影響は計り知れず、村の世帯のほとんどが、積み立てを取り崩さざるを得ない状況となっていた。
事態を重く見た村長と住職は村民を寺に集め、今後のあるべき成仏宴の形について、話し合いを持つこととなった。
話し合いは初めから、不満の嵐が吹き荒れた。
家族が死ぬたびに大きな出費があったんじゃたまったもんじゃねぇ。との材木屋の言葉には誰もが頷いた。
もっと規模を小さくしてはどだべ。とは、50代の若者。
そして長老が言った。
成仏宴なんぞ、やめっちめぇ。
お寺の本堂の熱気はサーっと音を立てて逃げて行った。
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たはらかに様
今週もよろしくお願いいたします。