Pre春弦サビ小説 PJさんxにゃんくしーさん
背景にこの曲が流れています♫
私たちは春の音楽の宴を満喫いたしました
それを前振りに、その宴の後のサビをお聴きください
春の詩(うた) 【468字】
春の風が奏でるギターの音に目を覚ましたあなたは、昨日の宴会がなかったかのように晴れ晴れとした顔をして私を驚かせた。
ベッドで燻っている私を置いてキッチンに向かうその大きな背中は春を歌っていた。
珈琲を淹れる手を休め、あなたはソファに目をやった。
「どうかしたの?」
「いや何でもない」
そう言って、棚からカップを一つ取り出した。
「どうして?」
あなたはソファを顎でしゃくるようにしてから私を見た。
「何よ、どうしてカップが3つ?」
「だってお客さんだろ?」
あなたは一つをテーブルに、そして二つをソファのローテーブルに置いた。
「お客さんに失礼だろ」
「客なんて来ないよ。こんな休日の朝に」
「だって・・・」
ソファを見つめるあなたはいつものやさしい目をしていた。
「どうかしたの?」
「ああ、春の夢だったらしい。これまでは夢から逃げるのはいつも僕の方だった。でもやっと僕は夢を引き寄せたんだと思う」
「何言ってるの?」
「いや、いいんだ。僕は会社を辞めて、真面目に本を書くことにするよ」
あなたはどこからともなく聞こえるギターに鼻歌を歌いつつ、誰に言うでもなくそう言った。
了
春弦サビ小説実行委員会 御中