恋文求ム 三羽さんの企画
君へ
手紙をありがとう。
ポストを見て驚いたよ。君から手紙を受け取れるなんて。
でもどうして手紙なんだろうって手が震えてしまった。
あの打ち上げの日、ぼくたちがいっしょに帰ることになったのは幸運だったと思ってるよ。駅までのほんの僅かな時間だったけど、月の下の君は本当に綺麗だった。上弦の月だって君は言ったね。左側が欠けた半月をそう言うんだってぼくは知らなかった。
あの時、君が仄めかしたことにぼくは気づかなかった。ほろ酔いだった君の頬に夜風が気持ちいいんだって、そのまま受け取ってしまった。
あれからもう少し歩こうって誘ってもよかったのかな。この手紙はそう採ってもいいってことなんだよね。
ぼくは本当に碌でなしの意気地なしだって思う。
今、ぼくは君が文字を認める様子を考えてうれしくなっている。君の書く「そ」はとても美しくて、ぼくは好きだ。もちろん他の字も好きなんだけどね。取り留めがなくなっちゃうね。
メールでもそう思っていたんだけど、君の文章はいつも明るくて楽しい。でも少し涙の湿り気があるって思うんだ。それがどうしてなのか、ぼくにはわからないけど、そんなところも好きなんだ。
できるならあの時に戻って、君をあの上弦の月に閉じ込めて、君が少しずつ輝きを増していくのを見たい。それを君が受け止めてくれるなら。
【543字】
三羽さん
よろしくお願いいたします