夜光お御籤 毎週ショートショートnote
石段の下で躊躇った。
「マジで上がんの?」
「なんてことない。暗いだけだ」
山手のこの神社に纏わるいろんな噂を聞いている。戦後の復興に紛れて、墓石を再利用したという石段は数える度に数が違うという。
ほんの二十段ほどを上がりきった先には闇があるばかりだった。空に突き出したお社の屋根でかろうじてそこに本殿があるとわかった。
踏みしめる足元が土ならば道から逸れていると思え、と友人が言う。
大丈夫。石畳だ。
拝殿の周りはもくもくと森が広がっているようだ。
友人が鈴を鳴らすと、鳥が飛び立つ音がした。
「大丈夫。怖れることはない」と見透かしたようなことを言う。
お御籤の機械にお金を入れる音。
「こいつは蓄光式の蛍光塗料。つまり機械の中は明るいってことだ」
そう言ってそれを開いた。夜光お御籤に「凶」の文字が見えた。
「ヤバいな。これは括ったほうがいい」
翌日、友人のsnsにへっぴり腰でお御籤を括る私の暗視カメラ映像が上がっていた。
すり替えやがったな。
410字
たらはかにさま
よろしゅうおたのもうします。