詩なんて シロクマ文芸部
「詩と暮らす」なんてあいつは言っているけど、この僕とはかけ離れた世界だ。
詩なんて・・・
出来の悪い高校生だった僕だって詩くらいは読んだことがある。誰のだったか忘れたが、詩集を枕の下に入れていたっけ。
僕は荒野の只中で変な奴等に囲まれていた。蛇女は口の中から蛇を吐き出し、大男は体に巻いた鎖をバラバラに砕いてみせた。火を噴く小人は見る間に虎の尻尾を丸焦げにしたっけ。そんなつまらない夢を見ていた。
でも今は地に足を付けている。でも、あいつはお構いなしにあらぬ夢を語り出す。ニュースを読んでいると、文字たちが手に手を取って美しい詩になるとか。
僕はそれどころじゃない。決算期を迎えたこの時期からは大忙しだ。
僕が会計ソフトを睨んでいると、9がいきなり足を伸ばした。まるで近衛兵。あいつのせいだ。あいつが変な夢を吹き込むからだ。
日に焼けた6が歩き出し4分音符になり、子どもの1に髭が生え、とうとう音が鳴りだした。太鼓の軽快なリズムでフラッシュモブが始まる。愉快なラテン。重厚なバロック。ジャズからソウルから目も耳も音楽で満ちた。
僕は音楽で世界を歩き回った。
ぼくはあいつと、アルチュール・ランボーと暮らしている。
500字
小牧部長 さま
今週もよろしくお願いします。