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夏、ときどき、夢 ふくふくさんの企画



夏、ときどき、夢  【356字】


熱の層が幾重にも重なり、掻き分けても掻き分けても、我が周囲に押し寄せ、この海の上へ鼻の先を出すのも不可能なことのように思えた。

うなされて目覚めた朝、我が心のままに蛇口を撚れば、熱湯から湯気が舞い上がる。

冷蔵庫を開いて、オアシスを手に取った。いっ時の慰めとあっても、この癒しなくば前には一歩も踏み出せぬ。
プルトップを力任せに引くと、泡が勢いよく吹き上がった。
こいつも既に侵されていた。液体は温度が高くなると気体を溜め込んでおけなくなる。
一気に飲み干すと、幾分かの清涼を得た気がした。
ここはもはや砂漠。いっ時の気晴らしがありがたい。しかしそんな慰めを地球は瞬時に奪い去った。
朦朧としたまま、我は風紋の陰に埋もれ、その体は干からびた屍となろうとしている。

肩を押されて目が覚めた。
「おっさん、サウナで寝たら死ぬで」
道理で
      了



ふくふくさん
よろしくお願いします


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