声 毎週ショートショートnote
声 【410字】
「山のポートレートを撮っているんだ」
さっき会った山の男はそう言った。山の風景、そう言えばいいものを。
これも隠喩というやつだ。山を擬人化すれば、それは肖像写真ということになる。山にも性格がある。そう言いたい気持ちはわからないでもない。
芸術家を気取りたいときはそんなことを言ってみるに限る。
私もよく言うじゃないか。蝉の声。あれは声なんかじゃない。腹というか胸というか、蝉のそのあたりに雄にだけ付いている襞?あれを何と言うんだ?それを振動させて音を出している。私が指をポキポキ鳴らすのとおんなじだ。
しかし待て。私たちは声帯を呼気で震わせて音を出している。それを声と呼んでいる。ならばそれが腹に付いていようが胸に付いていようが、はままたお尻だって、それを声と呼んでも問題ないのではないか?
ということは、体内に発酵して溜まった気体を尻から噴き出す時に括約筋を震わせるもの、それをケツの声と呼んでも何ら差し支えはなかろう。
了
たらはかに さま
よろしくお願いいたします。
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