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世界一しょぼいタイムスリップ 毎週ショートショートnote
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選ばなかった世界 【410字】
タイムウォッチャーが普及して久しいが、未だに使ったことはない。だいたい選択しなかった世界線上の自分がどうなってようが知ったこっちゃない。間違っていなかったことに胸を張れる相手がいるわけじゃなし、間違っていたら惨めになるだけだ。
使ってみたのはただの気まぐれだった。
私はやはり教壇に立っていた。髪は短く若々しさを演出し、青いシャツを着て澄ましていた。意中の人がいるようだったが、それを陰で嘲笑われていた。そこで放り出してしまった。気になって再びそれを覗こうとしても、もうその世界がどこにあるのかわからなかった。
代わりに見えたのは、冴えない男がつまらなさそうに仕事をしている姿だった。教員資格試験には受かったものの採用はなく、いっそ諦めようかと思った時に分かれた世界線だろう。
どの自分もやはり自分。世界一しょぼい男がいるだけだ。
タイムウォッチャーを閉じる時、世界線の選択画面が現れた。個人の世界線は一本に収束していくようだ。
了
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たらはかにさま
よろしくお願いいたします