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tomekantyou1
風を治すクスリ 毎週ショートショートnote
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風の行方 【420字】
おかしな風が吹いている。
ちょうど道を挟んで右と左で色が違う奇妙な空をゆりは見上げた。
ゆりに好意を寄せている矢野君か三木君、どっちかに決めなさい?でもそんなこと言われても決められるはずがない。
ひと際明るい空色のランドセルに男が近づいていた。
「どうした?」
ゆりが振り返ると父の笑顔があった。
「見て。この空」
「ああ、どうなってるんだと思う?」
「えっと、空の、ううん、風の神様が病気なんだと思う」
ゆりは慌てて応えた。
「じゃ風を治すクスリが必要だな」
そう言って笑う父を見て、ゆりもクスリと笑った。
「これはな、北の乾いた風と南のあったかい風がここで出会ったってことだ」
「これからどうなるの?」
「冷たい風の上にあったかい風が乗っかって、上に上がって雲ができる」
「じゃ雨が降る?」
「風の勢い次第だな。コンビニ、やめといた方が良さそうだ」
ゆりは父の右の腕に縋りついた。
向きを変えた二人が何やら楽しげに遠ざかっていくのを、風神は満更でもなさそうな顔で見送った。
了
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いや、スーパーマンだ!
たらはかにさま
よろしくお願いいたします