呪いの臭み #毎週ショートショートnote
揺らせば笑うことだってある。
大学の地下室で、解剖用の死体を処理するバイトをしている。理由は単純。バイト料がいいからだ。
死体の冷凍と解凍が主な仕事だが、通常、冷凍は先輩がさっさと済ませてしまう。でも今日は珍しく連絡を受けた。
駆け付けると、処理室の隅で蹲る裸の先輩の震える指が処理台を指した。
「笑ったんだ、そいつ。すぐに燃やしてくれ」
しかし勝手にそんなことはできない。体液を抜くために死体をひっくり返すと、後頭部が抉れていた。どうして事故遺体が紛れ込んだのか。ここでは処理できない。
「おまえ、呪われるぞ」自身の声が処理室に響き、気を失ってしまった。
構わず死体を冷蔵庫に戻し、処理台の上の記録用カメラを持って外に出た。生々しい死体は気持ちのいいものではないが、確かに慣れはある。
カメラの映像を見て吐き気に襲われた。あの先輩が・・・望み通り呪われればいい。死体の臭いでもホルマリンの臭いでもない。これこそ呪いの臭みというヤツだ。
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*コメント欄に解説しましたのでお読みいただけるとありがたく思います。
たらはかに様
よろしくお願いします。