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節分胎教 毎週ショートショートnote


さぁ♪うたいましょ♫


むかしむかし   【410字】

 見晴らしのいい丘の上に女性ばかり10名が所在なげに立っていた。
 遅れてやって来た女性は真っ赤な顔をして自転車を降りると、したたる怒涛の汗をバスタオルで拭った。
「年は取りたくないわね。ここまで上がってきたらもうヘトヘトよ」
 女性たちはどんな反応をしたものかとお互いに顔を見合わせた。
「じゃ始めますよ」
 赤ら顔が両手を挙げて宣言すると、女性たちは綺麗に二列に並んだ。
「今が一番大事なの。この季節の変わり目は空気が入れ替わる時。運気も変わっちゃうのよ」
 真剣な顔つきになった女性たち。大きなお腹を撫でながら、うんうんと首を振る。
「何をすれば?」
「お腹に手を置いて念じるの。良き恵みがありますように。世界と仲良くできますように」

 節分のこの日、世界を見下ろすこの丘の上で、やがて誕生する鬼の子たちに、世の人々のしあわせ、そして平和を胎教するのです。
 もちろん桃太郎という悪魔がやってきた時のお話も不幸な歴史として伝えられます。
    了


一夕閑話
 鬼とはどんな人たちだろうか。鬼を敢えて人と呼んだのには訳がある。私には鬼は4万年前にユーラシア大陸の西側で絶滅したとされるネアンデルタール人に思えてならない。
 彼らは我々サピエンス種よりもひと回り体が大きかった。頭脳も発達しており、火も道具も使っていたことが確認されている。では我々と運命を分かったのはどこなのか。彼らには社会性が欠けていたとされる。彼らはオリンピック単独種目には滅法強かっただろう。陸上競技なら圧勝!しかし団体競技には向いていなかった。戦争は団体競技である。
 彼らが4万年前に絶滅したとされるのは、あくまでもその時期の化石が発見されたということ。その後まで生き延びていたとしても何の不思議もない。
 社会性に乏しい彼らの社会の進歩の速度は緩やかだったろう。つまり我々よりも地球にやさしい種だったのではないかと思うのだ。

いい夢みてね


たらはかにさま
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