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バンドを組む残像 毎週ショートショートnote



友だちの影   【410字】

眼裏に残像が残っていた。
そこには実体があったに違いなかった。薄いピンクの壁には規則正しく穴が並んでいたし、頑強そうな鉄の扉には銀色のノブが重々しかった。誰かが座っているドラムにはPearlの文字。私はギターを胸にぶら下げている。
「じゃいこうか」
そいつは親しげに話しかけてくる。おそらく友だちなのだろう。
彼は軽快に8ビートを刻み始めた。彼の顔が見えない。

これはただの夢なのか。

私はさも当たり前のようにギターを弾く。そして声を上げた。
ふとドラムの方を見ると友だちの頭がない。でも不思議と恐怖はなかった。
彼は普通に喋ってたよな。そう思って本来首があるべきところを覗き込むと、この友人らしき生き物と目が合った。体に埋もれたその目は、異様なものでも見るようにこっちを睨んだ。
「どうした?ちゃんと演奏しろよ」
「こんなんで演奏なんかできるかよ」

目が覚めた。目は覚めはしたが、この異様なバンドの残像がやけに鮮やかに私の中に居座っている。
      了

たらはかにさま
よろしくお願いいたします


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