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森に棲む 毎週ショートショートnote


意味がわかると怖い話
わからなければ比較的平気かも


森に棲む   【410字】

シュバルツバルト、深く黒い森に棲んでいる。早や9年という時が私の上を風のように通り過ぎていった。

私はいいのだ。無様な官憲に業を煮やした彼女らの父親の一人が、当然の怒りのなたを振り下ろしたのだ。地獄にも迎えられぬこの身は、憐れむ価値さえない。どうか彼を赦してほしい。彼には一片の罪もないと私には言える。彼は起こり得る悪夢の幾つかをこの世から取り除いたのだ。

霧に満ちたこの森で、私は23のむくろを抱いている。愛おしき彼女らはもう骨さえこの世に留めてはいない。それは地に滲み、やがて茸を育てた。つぶさに見てきた私の今はなきこの目には、土くれから彼女らの体を食む茸の生き様が見える。

ここはもはや永遠に届かない。彼女らが帰りたくて止まない家の温かさには。家で待つ彼女らを愛おしむ者の元にも。

人はやってきては彼女らの茸を摘む。私に最後のひとつを残して。私は今年も今はなきこの口で食む。それにはいつも味がある。毎年のごと、残り物には懺悔がある。
     了


ハロウィーンだね!
え?まだ?
じゃ、いつなの?

たらはかにさま
よろしくお願いいたします


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